ペナン食い倒れ日記(19)~都会から消えてゆく屋台街の悲哀

<前回>

 ペナン食い倒れツアーでもっとも深い印象が残ったのは、ホーカーセンター(屋台街)。何よりも、コストパフォーマンスがいい。平均1品5リンギットが相場で10リンギット以上出せば、満腹満足状態になる。

 ところが、ホーカーはいつまでも現状のままで存続できるのだろうか。経済発展とともにどこの街からも屋台街は消えてゆくものだ。この辺を、3つの側面に分けて浅く考察してみたい。

 1つ目は、場所・地理的な側面

 香港やシンガポールもその好例だ。一昔街中に散らばっていた屋台街は撤去され、集約され、絶対数がどんどん減ってきている。近代的なショッピングモールなどといった集中キャンプ的な施設に追い込まれた屋台は、活気を失い、ひどく無機質的になった。クアラルンプールのジャラン・アローなど一部の屋台街は活気があるように見えても、むしろすでに観光アトラクション化してしまっている。

プレスグレーブ・ホーカーセンター前

 ペナンの場合、たとえば私が最初に足を踏み入れた「紅園」(Red Garden)も明らかに、ツーリストホーカーの部類に属している。場所柄、外国人などの観光客が多い。次に行った「プレスグレーブ・ホーカー」(Presgrave Hawker Centre)となると、ローカル客率がぐんと上がる。塾帰りらしき子供を連れて屋台ブースで買い込んでテイクアウトする現地住民もちらほら見かける。

 住民の利用率でホーカーのローカル度を計測したい。観光アトラクションよりもよりローカル度の高いホーカーを探し当てたい。グラブタクシーの運転手に聞くと、観光客にあまり知られていないローカル・ホーカーもまだまだあるようだ。次回のペナン旅行はこうしたローカル・ホーカーの探索・めぐりをテーマとしたい。

 2つ目は、ライフラインとコストの側面

 住宅街に散らばっているホーカーは、住民の日常生活に欠かせない「ライフライン」の一部である。これらのホーカーが集約されてしまうと、代わりに住民はコンビニなどいわゆる「次世代施設」を使わざるを得なくなる。良い意味での産業構造進化ではあるが、住民にとって必ずしも歓迎されるものではないだろう。

ジョージタウンの屋台

 現代社会の経済はつねに、「バージョンアップ」に依存している。「バージョンアップ」たる進化の無条件善化は1つの罠である。住民から多様な選択の権利を知らず知らずに取り上げるだけでなく、否応なしに生活コストのアップを押し付けることにもなる。

 屋台業者にとっても必ずしもいい話ではない。青空の下、街角のスペースを利用した屋台ならわずかな場所コストですむ。しかし、モール等近代的な施設に移動すれば、高額な賃貸料だけでなく、管理費やら共同宣伝費分担やらいろんなコストがかかってくる。営業時間の制限や喫煙の制限もかかってくる。それに客層も違ってくるので、商売のやり方も変えなくてはならない。

 業者のコストアップ分は当然消費者に転嫁せざるを得ない。

 3つ目は、業者人件費コストの側面

 これは他国のことを調べていないので、マレーシアの話に限定したい。ここ数年マレーシア政府は単純調理業務にかかわる外国人の雇用規制に乗り出している。単純調理業務の就労禁止も検討されているようだ。単純調理業務従事者とは、まさに屋台や簡易食堂あたりで働く従業員たちのことだ。

 ミャンマーやバングラデシュなどアジア諸国からマレーシアにやってきた出稼ぎ労働者の多くは、安い賃金で外食現場で働かされている。彼たちを追い出しても、マレーシア本国人が代わりにやってこないし、やってきたとしてもはるかに高い給料を払わなければならない。そのコスト増も最終的に消費者に転嫁される。すると、安い屋台も食堂も安くなくなってしまう。

 ペナンも現下存在しているホーカーはいつまで維持できるか、先が見えていない。

<次回>

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