居酒屋デフレ戦争の結末は?銀座の低価格居酒屋視察

 東京出張中に、昨今話題の低価格居酒屋の視察に出かけた。新橋に近い銀座8丁目界隈の某店。1階はドリンクだけでもOKな立ち飲みカウンター、2階は座席になっているが、料理の注文を必要とする。視察対象としては申し分ない。

 1階はほぼ満席、2階で辛うじて相席を確保して早速注文。スタッフは全員外国人。言葉の問題もあってか料理の注文は客が注文票に品目を書き込む形態が取られている。

 注文しても料理がやってこないのでいらいらして時計を見ていると、隣席のサラリーマン風男性が教えてくれた。「料理は1時間待ちですよ」。え~、冗談じゃない。次の予定もあって時間が足りないので、料理をキャンセルして1階の立ち飲みカウンターに移動する。

 1階も大混乱。日本人店長1人だけでもうスポーツ試合状態。汗を拭く暇もない。早速も2階から客が降りてきて苦笑しながらクレームをつける。「料理、来ませんけど。40分以上も待ってたよ。言葉も全然通じません・・・」

 「この店、私しか日本語通じませんから、1階に来てください。私から指示するから、すぐに作らせます」と店長。なるほど、私の早期移動は正解だった。業務用の大瓶緑茶と焼酎が目の前にあって、後ろの冷蔵庫にサランラップで包まれたトマトの皿が見えたので、緑茶ハイと冷やしトマトを注文。

 1階では、殺人的な「サービス提供風景」がよりリアルに繰り広げられる。料理を客に出そうとする東南アジア系の男性スタッフには、「おい、待て。ソース、ソース、ソースかかってないぞ」。店長は怒号に近い業務指示を飛ばす。

 外国人アルバイト・スタッフたちの日本語力は限りなく低い。ほとんど言葉を理解できない人もいる。多くの料理品目も名前と実物とマッチできないでサーブしているわけだから、問題を引き起こさないほうが不思議だ。

 研修が十分でないという指摘もあろうが、これだけの低価格店ではアルバイトの流動性も考えれば、逆に丁寧な研修を実施するほうがおかしい。過剰な研修コストをかけるのは自殺行為ともいえるだろう。

 確かに安い。激安。居酒屋業界の価格破壊が語られて久しい。1990年代半ばに1.5兆円程度あった居酒屋市場規模は、現在の約1兆円にまで縮小している。深刻な構造不況とにらめっこして居酒屋業界に見られるのは低価格競争、いわゆるデフレ戦争だ。

 かつての居酒屋といえば、500~1000円程度のメニューが一般的だったが、いまや低格店ないし激安店では100~300円が当たり前になっている。品目によっては材料費率が通説の20~30%台を大幅超えている。すると人件費をはじめ、運営コストのドラスティックな削減に頼らざるを得ない。

 牛丼が儲かっても、居酒屋は儲からない。その理由はやはり、居酒屋は嗜好品摂取分類に入っているからだろう。本当に食費で困っているなら、居酒屋よりもまず牛丼屋に足を運ぶだろう。

 若者の飲酒率の低下、雇用の不安定や所得の低下・・・。日本の居酒屋市場は消費者層の高齢化によって引き続き縮小するだろう。そこで低価格化のデフレ戦争の進行によって、結果的に誰もが最終的勝者になりえない。成熟市場における価格破壊戦略の有効性は、すでに実証できている。

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