「平壌館」の秘密、ハノイの北朝鮮レストラン視察

 ハノイ出張中に、市内にある北朝鮮レストラン「平壌館」へ調査取材に出かけた。

 北朝鮮への経済制裁で、金政権の外貨財源の1つである海外北朝鮮系レストランの利用もなるべく控えたいという大前提もあって、調査目的の下で、消費は最小限に抑えることにした。

 全体的に印象としては、以前よりは派手さが失われ、例のショーも民族色彩や政治的色彩が薄れ、西側諸国の客の趣味に合せたものかどうか定かではないが、一部西洋風にリアレンジされている。とはいっても、地味。

 対比として10年前の2009年上海の「平壌館」で撮影した写真を掲載する。ハノイ店では、このような往時の華やかさはもうない。

 料理も昔のように、毛ガニなどの豪華メニューは姿を消した。食材はたとえば、ユッケの牛肉は北朝鮮からの輸入物だったり、キムチはさすがにベトナム産の野菜を使っているが、漬け込みは自家作業でコスト削減に励んでいるようだ。ここ数年、対北制裁の強化で効果が徐々に表れているという状況なのかもしれない。

 運営の効率、生産性の高さだけは、従来通り変わっていない。店長たる人物がいないのはどこの北朝鮮レストランも同じだが(裏に隠れている政治監視員はいるだろうが)、ウェイトレスたちの働きぶりは凄い。ハノイ店の場合、7名の北朝鮮人女性がウェイトレスとショー出演を兼務しながら、運営を切り盛りしている。満席時は数えてみると、50~60名の客もいるのに、運営は大変円滑だった。

<上>スンデ=朝鮮流の腸詰。豚の腸に、豚の血液、餅米、刻んだ香味野菜、唐麺などを入れた後、蒸して作る。

 共産圏の集団主義的な運営モデルは、こういった商業施設にも導入されると、効率性に関してはむしろ資本主義のそれを凌駕している側面もある。このあたり、経営面の研究は私の専門分野であるから、興味深い。

 商売は繁盛だ。ショータイムの前後、満席。8割以上は韓国人。補助席をつけて詰め込むテーブルもあって大繁盛。

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