技術と芸術、コンサルタントは「悪魔の代弁者」

 私は経営コンサルタント。顧客がコンサルタントに質問する際の聞き方は色々。たとえば、「どう思いますか」と聞かれたら、率直に観点を述べることができるのだが、いちばん難しいのは、顧客が「○○と思います」と観点をぶつけてきたとき。特に複数の参加者が出席する会議で一番上位の人からそう言われたとき、反対意見をどういう形にして切り返すかだ。

 昔若い頃は、「私は違うと思います」とストレートに切り返したところで、さすがに一瞬場を凍らせたことが何回もあった。なかに本社の役員が相手で後日コンサル契約を打ち切られたこともあった。私は友人に対しても顧客に対しても誰に対しても、基本的に「Yes」「No」をそのまま結論から入るので、それだけで引いてしまう人もたくさんいる。

 毒舌を通り越して「悪魔」だと言われたこともある。

 「悪魔の代弁者(devil’s advocate)」という言葉がある。多数派の意見に対して批判や反論をし、同調を求める空気をぶち壊す人のことをいう。欧米の場合、批判・反論しにくい同調の空気があると、複眼的な目線による議論がうまく機能しなくなり、健全な思考ができなくなることがあり、それを防ぐ方法として、自由に批判・反論できる「悪魔の代弁者」たる人物を肯定的に捉えている。しかし、日本はそうではない。やはり、空気を読む必要がある。

 年を取るにつれ、私も少し丸くなった。反論の際、「別視点から」「異なる側面から」「1つ違う仮説を立てる」などと前置きをしたうえで徐々に論点を打ち出していくようにし、これで状況がずいぶん改善された。一方、そうしたスタンスを明確にしてしまうと、たとえ顧客の意見に賛同するときでも、なぜ賛同するか、それなりの理由を明示しなければならなくなる。

 それは賛同される結論に至るまでの顧客の文脈を整理し、「見える化」する作業である。この整理作業は顧客の新たな気付きやひらめきを引き出す効用があることを知ったのだ。「何となくこんな結論になったが、これでその経路が見えたので、モヤモヤした気持ちがすっきりしました」という顧客は次から、「そういえば、別の視点から○○△△という仮説も立てられますね」と仕掛けてくる。嬉しい。これ以上嬉しいことはない。

 コンサルタントとは決して顧客に何かを教えるのではなく、顧客が自ら問題を解決するように議論を仕掛け、議論を重ね、議論を引き出していくことが仕事なのだ。そのための「悪魔の代弁者」役も引き受け、演じなければならない。ただ、その演じ方をなるべくマイルドなもの、洗練されたものにする必要があると考えた。議論は技術だけでなく、芸術も必要だ。

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