コンサルタントが生き残るための「サイエンス」と「アート」

 十数年前、私はやっとコンサル業で少し売れ始めたころ、早速大学院に入り、MBAやロースクールの勉強に取りかかった。その当時のことで、いまでも鮮明に覚えているが、ある顧客企業の日本人経営幹部にこう聞かれた――。

 「立花さん、もしやマッキンゼーのような会社を作ろうとしているんですか」

 褒めているのか、冷やかしているのかよく分からないが、私はそういうつもりが全くなかったので、「ノー」と答えた。そうすると、その方はこう言った。「学校通いは結構時間を食いますよね。その時間で案件をさばいたら、収益性が全然違いますよね」

 なるほど、私の親身になって考えてくれたのだ。私は正直に答えた――。

 「私はマッキンゼーになりませんし、なれもしません。けれど、マッキンゼーのできないこと、していないことをしたいので、まずマッキンゼーがやっていることを一通り知らないといけません。そのための勉強です」

 マッキンゼーは、経営戦略をサイエンス(科学)として研究し、知的生産物の量産化を可能にした偉大な企業である。サイエンスとは、経営の意思決定の一つひとつを「なぜそうするのか」というふうに論理的に説明することだ。

 一方で、あらゆる量産可能な生産物は、AI(人工知能)によって取って代わられる可能性がある。すると、これに対抗するために、サイエンスに対置されるアートの出番となる。その点については、私の読みが的中したというよりも、超頭脳軍団のマッキンゼーが気付かないはずもなく、2015年にマッキンゼーがデザイン会社の「LUNAR」を買収した。

 経営戦略面においては、近い将来に、サイエンスよりもアートで勝負する時代が到来する。私自身も法律や経営といったプラクティカルな分野を中心に学んできたものの、アートとの親和性が薄かった。そのための勉強をしようと、すでに始まっていた哲学に加え、10年前から美術と音楽に取り組み始めた。

チェスキー・クルムロフでスケッチ中

 2011年秋、ドヴォルザークとスメタナの足跡を追うチェコの旅に出た。チェスキー・クルムロフやプラハでスケッチをしながら、名曲の数々を繰り返し聴いた。そのアートの旅は実り多きものとなった。そのインスピレーションから生まれたのは、私独自の主力コンサル商品である「3階建®」の原型(2階建の大改造)だった。

プラハ国立オペラ座でドヴォルザーク作曲の歌劇「ルサルカ」 を鑑賞

 私は美術も音楽もまったくの門外漢だ。大学は建築学だったから、一応デッサンという科目があって少し絵を描いたことがあるが、絵画鑑賞の知識はない。音楽でももちろん楽器ができるわけではないし、楽譜やスコアすら読めないど素人である。オーケストラはその組織の運営に興味があってコンサートホールに足を運んだわけで、動機不純も甚だしい。

 とはいっても、もうクラシック音楽から切り離せない人生になってしまった。YouTubeを聴きながらの執筆作業が日常化している。

 補足しておくが、経営について、決してサイエンスを否定しているわけではない。ただ、サイエンスだけでは成り立たないことに気づいた以上、アートの取り入れ、アートとサイエンスのリバランスは欠かせないといっているのだ。

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