経営者や経営コンサルタントという職業が消える日

 私の職業は、経営コンサルタントである。そこで一番関心があるのは、将来的に経営コンサルタントという職業はAI(人工知能)に取って代わられるかということだ。

 結論からいうと、残念ながら、「イエス」だろう。理由をいう前に、まずコンサルタント業の稼ぎ方を見てみよう。企業の経営というだけなら、私たちコンサルタントは決して顧客である経営者より賢いわけではない。何で稼ぐかというと、基本的に「サイエンス」で稼いでいるといっていい。

 経営学やら管理学やら、企業の経営が学問になった時点で、一種のサイエンスとして認知される。事実やデータをベースに情報を分析し論理的に最適とされる結論を導き出し、意思決定の材料や提案として知的生産物を企業に提供し、そこで対価としてコンサルティングフィーをいただく。このいわゆる「定量化作業」に事例や経験といったものが使われている。これもコンサルタントの付加価値といっていいだろう。

 データの蓄積や検索、一定のモデルやツールを用いる情報処理というのは、AIの得意分野である。つまり「サイエンス」の部分では、AIがコンサルタントを駆逐する力も余地も十分にもっていると認識すべきだろう。法律分野を見ても同じ。法律と判例検索と分析は基本的にAIの得意分野だ。

 故に、方向性と流れとしては、経営コンサルタントはAIに取って代わられ得る職業といっていいだろう。もちろん経営者にも同じことがいえる。少なくともいまのような大量の経営幹部は必要とされなくなるかもしれない。

 経営上の意思決定を「サイエンス」によって科学的に行うということの本質は、「なぜこのような意思決定をするのか、説明できるようにする」ためである。ただ、サイエンスが浸透すれば、ある意味で均一的・画一的なアウトプットができあがる。特にAIを導入すれば、知的生産物の均質性が一層高まるだろう。そこで「差別化」が新たな課題として浮上する。

 企業経営の差別化は、「サイエンス」を超えた部分の「アート」に依存せざるを得ない。いってみれば、必ずしも論理的に説明できるわけではないが、何となくこのような感じで進めたほうがいいだろうという直感、感性的な部分がより顕在化しなければならない。俗にいわれているリーダーの「カリスマ性」も「アート」の範疇に属する。

 将来的に経営コンサルタントも経営者も大幅に削減され、「アート」分野における付加価値の創出に真価が問われる、そういう時代になっていくだろう。

タグ: