民主と親中で香港の飲食店も分断、分布マップで見る人間模様

 「あなたは家庭があって(デモの)最前線に出られないかもしれません。激しく戦う勇気がないかもしれません。(民主化運動のために)作曲する音楽の才能を持ち合わせていないかもしれない。でも、あなたは行く店と行かない店を選択する権利をもっています!」

 香港の「黄青二色店舗分布マップ」(https://www.restart-hk.com/ShopList.html)は、香港各区域別のレストラン等の商業店舗を、民主派(黄色)と親中派(青色)に区分掲載し、リアルタイムで更新している。市民から投稿・提供された情報を元に分類し、ランキング評価を行っている。

<写真>ネット掲載分引用 香港銅鑼湾・天后地区の黄青二色店舗リスト(一部)

 黄色店舗は、デモ・民主化運動支持のポストやネット投稿だけでなく、実際にデモ参加者に無料の食事や飲料を提供したり、参加者の安全庇護に協力したりすることで評価を得ている一方、青色店舗は中国や香港政府・警察支持の立場を表明したり、従業員のデモ参加に妨害措置を講じたりすることで「親中派」と分類されている。

 たとえば、話題の「吉野家」に関して、以下のようにコメント(抜粋)されている。「吉野家のスタッフが無断で『警察批判・侮辱』の告知を打ち出したことで解雇された。同社総裁が近日、香港警察を支持する大会に参加し、香港政府の決定と行動を全力支持すると表明した……」

 青色店舗の傾向としては、①中国に出店・事業展開しているチェーン系列、②「商売の邪魔を排除する」志向者、③中国本土出身者オーナー、④左派左翼と大きく4つ分類できる。

 たとえば、私の周りにも香港デモに反対し、なかにデモ参加者を派手に批判・非難している日本人も散見される。日本人(企業)の場合、ほとんど①や②の部類に属している。遵法に対する潔癖的な固定概念もあり、経済的利益が損害されたことで不満を持ち、ないし憤慨している者が多い。デモの長期化や過激化によって、香港現地の観光業や小売業だけでなく、他のビジネスにも幅広くマイナス影響が拡大しているのは事実である。これに関して、当事者として快く思う者は誰もいない。

 ただ視座を少し変えてみると、香港の騒乱がもしや名の通り「革命」だとすれば、異なる景色が見えてくるはずだ。戦後の日本人は民主や自由のために戦ったことがなく、天から降ってきた自由を満喫してきた。ルールと秩序を守る「良い子」の姿勢を善とする日本人はなかなか香港人の立場や心境を理解できない。そうした背景があっての日本人(企業)はある意味で、いまの香港で、「青色」に分類されてしまうだろう。

 ビジネスが奪われている点では、香港人も同じ。商売か自由・民主化か、生まれ育ちの土地の将来と現下の生計、葛藤を抱えながら苦悩する香港人の胸中を察する、このような優しさを少しでも持ちたいと思いませんか。

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