当選不能版、日本を再起動するための現実八策

 結論として、以下の八策は日本が長期停滞を脱するための最小限の現実策である。いずれも政治的には「落選確実」だが、経済合理性と制度持続性の観点からは極めて正しい方向である。

1. 競争メカニズムの全面導入(=解雇自由化)

 競争なき雇用は、企業の生産性を腐らせる。労働市場における「退出の自由」こそが「参入の自由」を生み、活性化を促す。したがって、解雇自由化は不可欠である。ただし無秩序ではなく、予見可能性と補償制度を整備することで法的安定を確保すべきである。労働契約の終了は、懲戒ではなく「経済合理的契約終了」として位置づけ、職業再訓練(リスキリング)+給付型移行支援をセットで実施する。これにより企業は人件費固定化リスクを減らし、積極的に採用・投資できる。自由に雇い、自由に辞められる環境こそが、真の自由市場労働である。

2. AI化の徹底と「人間の再配置」

 AI導入は雇用破壊ではなく、雇用再設計の出発点である。行政・製造・物流・教育など全分野でAI適用を義務化し、人件費削減ではなく付加価値再創出に資金を振り向けるべきである。AIを導入しない企業には補助金を与えず、税制優遇も撤廃すべきである。AIに置き換えられる労働は保護ではなく転換を、AIに置き換えられない労働には尊厳と報酬を。

3. 高度技能外国人の積極誘致

 日本が必要とするのは、低賃金労働者ではなく「知識の輸入業」である。高度技能・研究・起業型外国人を積極的に受け入れ、ポイント制の上限を緩和し、永住候補枠を拡大する。同時に、知識移転・教育貢献・起業義務を制度化し、単なる労働力ではなく「知の資本家」を呼び込む。移民とは賃金の穴埋めではなく、社会の知的筋肉を増強する行為である。

4. 日本人肉体労働者への所得税半減措置

 社会的に不可欠な肉体労働を守るには、賃上げではなく税引後所得の最適化が有効である。建設・介護・物流・農業などの基幹労働者には、時限的に所得税50%減免を導入すべきである。これは「保護」ではなく「報酬の再配分」である。真面目に働く者が報われる制度を作らねば、国家は信頼を失う。

5. 安全弁としての自動安定給付制度

 競争は失業を生む。だが失業は悪ではない。悪なのは、失業者が再挑戦できない制度である。従来の政治的生活保護ではなく、所得ショック自動給付システム(BIのプロトタイプ)を構築すべきである。AIによる所得監視と自動トリガー発動で、申請不要・即時支給を実現する。これにより、政治的ポピュリズムと人為的裁量を排除できる。

6. 生活保護の現物支給中心化

 現金給付はしばしば消費の浪費・依存を助長する。生活保護は現金よりも現物へ――食糧、住宅、医療、教育、通信など、生活基盤の実体支給を中心とすべきである。生活は保障するが、怠惰は保障しない。現物支給によって、最低限の生存を守りつつ、再就労への心理的圧力を維持できる。福祉とは優しさではなく、社会秩序を保つ知恵である。

7. ベーシックインカムの段階的導入

 所得保障は感情ではなくテクノロジーで管理すべきである。まずは若年層・高齢層・失業層を対象に、限定的なBIを実装し、AI監査により不正を排除する。財源は消費税+炭素税+データ取引課税でまかなう。BIは福祉の拡大ではなく、行政コスト削減と国民監査の合理化である。

8. 米中と対等に立つ多極外交

 対等外交とは勇ましさではなく、自立したサプライチェーンである。エネルギー・食料・半導体・AIの基盤を多極化し、どの陣営にも依存しない国家運営を行う。対米従属を脱し、対中恐怖を超え、ASEAN・インド・欧州との多軸連携を構築する。外交とは「取引能力」であり、取引は「知と技術の信用」で成り立つ。

 この八策は、いずれも国民に「痛み」を強いる。しかし、痛みなき改革は幻想である。解雇自由化は恐怖を、現物支給は不満を、AI化は抵抗を、競争は分断を生むだろう。だが、それこそが停滞を破る唯一の刺激である。安さに依存し、ぬるま湯の平等に溺れる国家は、ゆっくりと死ぬだけである。

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