中国人はなぜシートベルトを締めないのか?

 「ほらっ、シートベルトまた忘れたじゃないか!」

 社用車の運転手は、いつもニコニコして、大変良い人ですが、欠点は一つ、シートベルトを締めたがらないことです。10回中に7、8回締めない確率で、私が文句を言うと、いつもこう言い返します。

 「高速道路のときは、ちゃんと締めているのです。上海市内は、渋滞も多いし、スピードが出ないから、没問題!」

 問題は、ここです。

 中国では、法律やルールがなぜ守られていないのか。たとえば、シートベルトの着用がその好例です。危険有無の判断は、各個人レベルでされると、判断材料や主観的な見解の相違があって、結果的に社会的利益にならないので、立法者が総合判断して法律を作るわけです。法律そのものは、個人の判断を否定してのルールなのに、判断で法律を運用するのが中国です。

 さらにいうと、昔、当社の顧問弁護士も、助手席に乗ってもシートベルトを着用しません。「法律人として、君は失格だ!」と、私が何回も怒鳴りつけた末、今はきちんと着用するようになりました。

 私は、3年前、台北で、大きな自動車事故に遭遇したことがあります。早朝、台北中正国際空港に向かう途中でした。乗っていたのが白タク(?)のメルセデス・ベンツ、時速30キロほど台北市内走行中に、横丁からいきなり飛び出してきた乗用車に激突され、ベンツ車体が空中45度傾斜となり数十メートル蛇行しながら、横転直前でした。

 幸いにも、車体の重いベンツのお陰で横転炎上にならず、一命を取り留めました。ベンツは大破。先方の乗用車の運転手は、飲酒運転、事故で血だらけの重傷。私は、かすり傷ですみましたが、同乗していた妻は、頭を打たれ、日本でCTスキャンの検査をして、傷害がないと判断され、その後半年観察して後遺症の形跡がないことで、やっとホッとしました。

 事故当時、激突の衝撃で、体が宙に浮き、その空中に放り出される恐怖感は、いまでも忘れることができません。やはり、一度体験しないと、シートベルトの有難さが分からないのですね。

 法律は、守ってください!家族の幸せのためにも、シートベルトの着用を!

 私は、まるで、日本の運転免許証更新時に見せられるプロモーションビデオの出演者のようです。

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