すでに起こった未来、そして何をしておくべきか?

 告知して半日で満席になった「外国人社会保険加入義務化と集団交渉実務セミナー」(上海会場 7月1日)は、7月14日に再開催が決まった。それも、昨日告知して1日で8割が埋まった。有料セミナーにもかかわらずわずか2日で80名近くの出席が集まったとは空前の記録だ。

 外国人社会保険の義務化に対する日系企業の関心が高い。そして、各地では相次いで集団交渉(団交)条例が公布されるなか、2つのホットトピックが一堂に集まった。

 1年前のセミナーでいずれも予測していたものだった。

 労働契約法が出て、無固定期間契約や解雇問題に関心が集まったとき、私は、不良従業員問題や労働紛争に気をつけようと呼びかけた。予測通り、労働紛争が急増すると、私は、今度労働組合、集団争議と賃金が大きな問題になり、ストライキも不可避になると予測した。そのわずか数ヶ月後、広州ホンダの大規模ストが勃発し、しかも全国範囲に広がった(規模こそが、私の予想を超えていた)。そして、賃金引き上げ問題がいよいよ本格化した。これにくっ付いてくるのが、集団交渉や労働組合問題だった。

 いま、私が一生懸命、叫んでいるのが、「労働生産性」の問題だ。まだ、多くの日系企業が関心を払っていないが、この問題を徹底的に解決しない限り、中国事業の将来はないと。

 いまの人事労務問題は、コストの問題であって、基本的に中身が財務の問題である。社会保険も、賃上げも、経済補償金も、人事管理の証拠保全も、すべてのすべてがコストである。コストは財務の問題だ。「労働生産性」のほか、解決の方法は皆無だ。

 最近のセミナーで、たびたび、私は労働生産性に触れ、管理会計制度の導入を呼びかけている。管理会計はとても難しいから、ためらう企業も多いが、数年後、明暗は分かれると思う。

 ピーター・ドラッカーがその大作「断絶の時代」のなかでこう語った。

 「経営管理者にとって最重要の仕事とは、すでに起こった未来を見極めることである。社会、経済、政治のいずれの世界においても、変化を利用し、機会として生かすことが課題となる」

 中国のビジネス現場で、「すでに起こった未来」とは?私たちはその「すでに起こった未来」を見つめているか?そして、その未来に備えて何をしたか?

 絶えずに自問しなければならない。

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