<上海>韓食の설렁탕、ソウル下町で庶民の喜びに浸かる

 無性に韓国料理を食べたくなった。しかも、下町の庶民の味を食べたい。金曜日の夜、大渋滞の上海の街を1時間も走って目指す店は、呉中路にあるソルロンタン (설렁탕)。

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 蛍光灯、大音量の韓国語TV放送、ニコニコのアジョマ(おばさん)、三拍子揃ったこの店は、とりあえず合格。今日の注文予定は、生もの→焼き物→スープ。

 まずは、ユッケ(35元)。本来この一品は庶民の味とはいえないが、どうしても食べたかったので、注文した。血抜きした生の牛肉を細切りにし、松の実やゴマ、ネギなどの薬味と、醤油やごま油、砂糖、コチュジャン、果汁などの調味料で和え、中央に卵黄を乗せ、最後にナシやリンゴの千切りを添えて供するのが、ユッケだ。

 高価な料理であるだけに、量が少なめのはずだが、この店は凄い、細切りならぬ太切りの生牛肉がどさっと、出てくる。わあー、思わず歓声を上げる。腹がぺこぺこで、ライオンのようにかぶりつく。ごま油と果汁で絡められた肉はするっと口中に滑り込むと、上下の歯がさっそく動き出す。ああ、我輩にも野獣のような牙が生えていればなあと悔しがる一瞬だ。牙(きば)で肉を手早く分解すれば、ソースが付いている間に、細分化された肉の細かいところまで味わえたのに、人間の歯はそこまでできないのが残念だ。

25241_2野獣になって牙を立てて食したい豪快なユッケ

 次は、焼肉、今日のメインは、豚焼肉(45元)。

 韓国の焼肉といえば、日本人なら牛肉だが、実は、本場韓国では豚肉が主流。昨年ソウルの友人を訪ねて行ったとき、教えてくれた。

 「牛肉は高価で、韓国人には非日常食ですよ。よほど接待のときでもないと、食べません。身体にも良くないし。韓国人は日常的に豚肉を食べるのです」といって、ソウルの下町にあるサムギョプサル(삼겹살)の専門店に私を連れて行った。「サム」は数字の3、「ギョプ」は層、「サル」は肉を表し、日本でいう三枚肉、すなわちばら肉の意味だが、日常「サムギョプサル」と言えばこの豚の三枚肉の焼肉料理のことをさす。

 上海のこの店が出してくれたのは、「サムギョプサル」ではなく、「オギョプサル(五枚肉、오겹살)」、中国語の「五花肉」だった。サムギョプサルに、皮とカルビ肉の2層を加えたものである。

25241_3豚焼肉「ジンギスカン鍋タイプ」
25241b_308年8月ソウルで韓国人の友人と一緒に食べた「斜め鉄板タイプ」

 味付けしていない豚の五枚肉のスライスを、鉄板上で表面が黄金色になるまで焼く。その鉄板は大変面白い。斜めになっているタイプ(写真=ソウルの店)とりジンギスカン鍋のように中央が盛り上がっているタイプ(写真=上海の店)がある。いずれも、余分な脂身を落とすためである。焼けた肉は、塩を溶いたごま油につけたり、青唐辛子のスライスや生にんにく、ネギのスライス、そしてサムジャン(味付け味噌)と一緒にサンチュやエゴマの葉などに巻いたりして食べる。

 さらりと食べてしまうのが豚肉だ。牛肉よりは、軽めでとても食べやすい。

 最後は、ソルロンタン (설렁탕)。牛の骨や各部位の肉、舌、内臓を大きな鍋に入れ、水で10時間以上煮立て、乳白色のシンプルなスープになるはずだが、この店は、看板料理としながらも、インパクトのある味ではなかったのが残念だった。

25241_4豚焼肉をこうして食べます
25241b_4ソムロンタン

 真露2本も空けたとき、もう満腹のほろ酔い気分になっていた。

★韓国家庭料理・ソルロンタン (설렁탕)
<住所>   閔行区呉中路1050号盛世蓮花広場B幢1階路面
<電話>   021-6126-5949
<経理>   金貞姫
<営業>   00:00~24:00 (24時間営業)
<予算>   50元~100元