スリランカ日記(10)~小さな古い街の小さな古いホテルその一

<前回>

 2009年12月31日、今年最後の日、紅茶の街ヌワラ・エリヤを離れ、高地から下り、海岸線に出ると一路南下し、港町ゴール(Galle)を目指す。

31766_1
31766b_1今回泊まるフォート・プリンターズ・ホテルの正面玄関

 世界遺産であるゴールの旧市街は、19世紀にその地位をコロンボに譲るまで、スリランカ第一の港として栄えた。遡れば、1589年にポルトガルが造った小さな砦、要塞都市が、1640年オランダによって拡張され、今の旧市街の原型になった。

31766_2
31766b_2ロビーには古い印刷機が飾られている

 インド洋に突き出た厚い石積みの砦は、スマトラ沖地震の津波から街を守った。1796年イギリスがゴールを植民地とし、一大貿易港として繁栄の絶頂を迎えさせた。

31766_3
31766b_3

 ゴールという街は、日本人にあまり知られていないようだ。私は、古い街が大好きで、ゴールでゆっくりと2泊も滞在する予定を立てた。しかし、2日の間、ゴールで一人もの日本人観光客に出会っていない。ホテルの滞在客は、すべて欧米人だった。つづら折りの道の連なる古い街では、旅人のための宿はどれも目立たないように設計されている。ホテルだと自己主張する建物は皆無だ。ほとんどのホテルは古い欧州風の民家スタイルで、古びた外観と控えめな佇まいでカモフラージュしている。よく見ないと、ホテルであることは分からない。

 ザ・フォート・プリンターズ・ホテル(The Fort Printers)

 ゴールで私が泊まるのが、この小さなホテルだ。小さなホテルとは、わずか5部屋、10名の客しか収容できない。年末のため、3ヶ月前からやっと取れたという欧米人に大変人気な宿。

 古い時代に、学生寮であって、また後、小さな印刷工場として利用されたことから、今の名前が付けられた。

31766_4
31766b_4

 ホテルに一歩入ると、古い印刷機がロビーに置かれ、古き良き時代の香りに包まれる。客室はたった5室のスイートだけ。それぞれに「ヒストリー(歴史)」「ジオグラフィー(地理)」「アーツ(芸術)」「ヘッドマスターズ(学長の部屋)」「プリフェクツ(寮長の部屋)」という名前が付いている。

 通常、ホテルに見られるフロントデスクなどは一切設けられていない。館のリビングのソファーで宿泊表に名前をサインするだけ、パスポートの提示も求められない。すぐに、部屋に案内される。

<次回>