ミサイルと自動小銃そしてジャングルゲリラ、「非常識」の重要性

 「実は、当社は、X社に人事考課制度を依頼しようと、契約の直前です。今日の立花さんの話を聞いて、すぐに再検証する必要を感じました」

 昨日の広州研修会で、A社のB総経理がこう言ってきた。

 X社は、2万人のスタッフを抱える世界最大級の人事コンサルティング会社だ。世界に共通するコモンセンス的なコンサルティング・ノーハウとしては無敵であろう。私は、決して、X社より当社エリス・コンサルティングの商品が良いから、当社と契約するよう勧誘しているわけではない。ただ、一つ考えるべきことを提起しただけだった。

 「そもそも、良い商品とは何か?」

 「良い商品とは、顧客企業が実際に使って、役に立つ商品だ」――。これは、私の考えだ。世間一般評判の良い商品で、特定のユーザーに果たして適合しているか。X社の商品は、世界仕様で高い評判を得ていることは紛れもない事実だ。けれど、それが、中国の特定地域の特定業種の特定のA社に適合しているかどうか、導入すれば、A社の総経理や人事部責任者、担当者が満足するような実施効果を得られるかどうか、もし、A社がX社に再確認するようであれば、是非このような確認をしてほしい、そしてX社のコミットメントを求めるように、私のセカンドオピニオンとして提言した。

 商品の価値は、顧客企業の現場の改善が実際に確認されたときに、はじめて具体化する。さもなければ、その顧客にとって、いくら良い商品でも、商品の価値はゼロだ。

 アメリカのベトナム戦争やイラク戦争をご覧ください。世界一流のハイテク武器は、ジャングルのゲリラ戦や自爆テロリスト戦に勝てるのか?電子制御のミサイルは、自動小銃や自製爆弾に勝てるのか?

 この世の中、「世界の常識」は重要だが、特定の企業にとってもっともっと重要なのは「○国の非常識」ではないだろうか。

 中国の人事労務現場では、ハイテク制度がどこまで役に立つか。私は、数多くの企業から失敗談を聞かされている。立派な制度があっても、現場の実施者がそれを徹底する能力や経験、そして、一番重要なことに、それを徹底する動機付けや意思がなければ、どんな立派な制度でもただの紙くずになる。

 中国の人事労務現場では、まず、求められているのが「ココロ作り」だ。これがインフラである。表には見えず、地味だが、欠かせてはならないものだ。