裁判官の老婆心、異例の嘆きと説教で企業は動くのか

 今朝8時30分、A社の労働裁判で、上海市B区人民法院に弁護士と出廷。昨夜22時過ぎ、当社の弁護士は広州でC社の労働裁判を終え、上海に帰着したばかりだった。A社仲裁で敗訴した従業員があきらめずの上訴。争いに値する内容もあれば、デタラメな請求も上乗せられ、とにかく凄い訴額だ。

 「労働契約の違法終了には、私は怒りを覚えます」、従業員は声を張り上げる。
 「終了は法に則っていれば、違法になりません」、裁判官は冷静だ。
 「終了はとにかく酷い。私は絶対に、納得できません」、従業員はこぶしを握り、両目から憤怒の火花を散らし、一段とトーンを上げる。
 「原告は冷静に!裁判所は合法性を審査する場所です。あなた自身のロジックで説明しても、どう考えても、この訴額にはなりません」、裁判官は呆れた表情だ・・・

 「原告はちょっと・・・やりすぎですね」、審理終了して原告の従業員が法廷を出て行くのをみて、裁判官は異例の嘆き。「状況は大体分かりましたよ。今後は、しっかりと人事制度を作ってくださいね。きちんと文書化しないと・・・」何と裁判官は顧客企業の担当者に説教口調に。

 A社には2年前から、私が人事制度のやり直しと管理の制度化を提案してきたが、手をつけないまま今日に至った。会議室よりもこの法廷で、コンサルタントの私よりも裁判官の老婆心で・・・A社の制度改革の決意にこぎつけられたら有難いが・・・

 会社に戻る車内で、D社からストライキのコールが入る。

 帰社してニュースを見ると、ストライキが蔓延中。昆山の外資企業では2000名規模のストライキ、警官隊数百人と衝突し、けが人が50名も出たと・・・中国の労働現場は、呪われている。

 16時、「江蘇省のE社、人事制度構築の依頼を決定」と事務局から受注の知らせ。これで、江蘇省3社、浙江省1社、上海市1社、天津市1社の合計6社の制度を同時進行で進めることになる。日系企業はどんどん自己防衛に乗り出している。

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