訴えられた!人事コンサル会社は労働紛争に遭遇

 訴えられた。

 昨日、当社、エリス・コンサルティングには一枚の労働仲裁呼び出し状が舞い込んだ。数か月前に試用期間中に不合格として解雇された元従業員Aさんからの仲裁申立て――。不合格ではない、違法解雇だ。賠償金を支払え!

 人事労務のプロなのに、こんなことをよくも堂々と人に言えるね、なんて言われるかもしれないが、私は、プロだからこそ堂々と公開しなければならないと思う。勝訴になったら公開し、敗訴であれば黙っておく。都合のいいことだけ公表する。とんでもないことだ。結果にかかわらず、仲裁や訴訟になった時点で、処理に取引コストがかかってくるだけに、経済学的に会社にとって損失であって、一種の失敗である。失敗は無駄にしたくない。失敗を次の成功への投資にしたい。むしろ、失敗を公開し、自分のメンツを潰して、次の躍進を図りたい。――という劇薬を私はこよなく愛している。

 Aさんは、某有名大手人材会社から斡旋され入社した人間だった。このため、試用期間の管理が緩く幾分手抜きもあって、根本的な考え方が甘かった。これが問題発生の根源だった。

 Aさんが離職後、ある種の取引を持ちかけてきたことが数度あった。私はすべて断った。私が一貫して人事コンサル現場で顧客企業にも助言していることだが、「目先の利益を見てしまい、穏便にことを済ませようと、原理原則を曲げる。こんなこと、決してあってはならない。毅然とした姿勢で仲裁や訴訟に臨むべし」。

 会社は仲裁・訴訟に負けたら粛々と裁決や判決に従ってお金を払うが、交渉によって利益や便宜を提供することは絶対にしない。仮に、仲裁や訴訟が交渉より大きな費用がかかっても決して辞さない。なぜなら、失敗にかかる費用を無駄なく次の成功への投資にすることができるが、交渉はただ次の交渉を誘発するだけで正義観・倫理観上の問題が残り、良き企業文化の形成に悪影響を与え、実務上も問題の根源を根こそぎ取り除くことができないからだ。

 この案件は仲裁・訴訟が終了すれば、勝敗にかかわらず結果を公開する。顧客向けにセミナーや研修会で徹底的な原因分析をし、対策を打ち出す。そして来年出版予定の著書にも生々しい事例として取り上げる。

 こう考えていると、本来ネガティブだった仲裁や訴訟が、とても有意義なもの、ポジティブなものに転換できることが分かる。

<次回>

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