6月29日の本審理は、当社顧客が傍聴する中で行われた。冒頭に首席仲裁員に呼ばれる。
仲裁員 「最後まで和解に応じるつもりはありませんか?」
立花 「いいえ、何回も繰り返し申し上げているのですが、裁決を仰ぎます」
仲裁員 「試用期間の不合格解除の立証には、現状の証拠で十分だと思っていますか?」
立花 「法に則ってやるべきことはやったつもりです。あとは仲裁員の裁量権に委ねます」
仲裁員 「証拠不十分で、敗訴になりますよ」
立花 「これも繰り返し申し上げている通り、結果がどうであれ、たとえ敗訴であっても、謹んで受け入れ、粛々と改善を重ねていくのみです」
仲裁員 「何が利益になるのですが、和解したほうが有利だということ、分からないのですか?」
立花 「金銭や名誉より、もっともっと大きな価値があります。原理原則を曲げるほど大きな損失がありません。仲裁員のご好意は有り難いのですが、その辺の根本的な価値観が違いますので、お許しください」
仲裁員 「外資企業だからといって、その辺の価値観やら何やらどうでもいいのですが、中国のこと、中国の法律、分かっているのですか?」
立花 「中国の法律を最大限に尊重しているからこそ、ここで法の裁きを求めているのです。私たちは十分に法を守ってここまで努力してきたにもかかわらず、それでも立証に瑕疵があるとすれば、敗訴という結果を受け入れ、粛々とコンプライアンスを継続改善していくのみです。繰り返し申し上げた通りです」
仲裁員 「立証?不合格の立証?それができると思っているのですか?改善なんかして、立証できるようになると思っているのですか?」
立花 「法律の条文がある以上、立証は必ずできるはずです。立証できないような法律は法律と言えますか?」
仲裁員 「・・・?」
立花 「敗訴より、交渉や和解が最大な負けです。金を払って解決すれば、改善しないし、進化もしません。敗訴の痛みと屈辱を味わってこそ、改善、次の一歩を踏み出すのです」
仲裁員 「1回負けて、次も負けたらどうしますか?」
立花 「人間には学習機能があります。1回負けたら10個の教訓を手に入れれば、10回の負けに100個の教訓も身に付きます。成功は失敗の元ですが、失敗は成功の始まりです。失敗は財産です。ですから、遠慮なく私たちに敗訴の裁決を言い渡してください。待っております」
仲裁員 「企業にとって、敗訴は・・・」
立花 「もう結構です。審理を始めてください」
仲裁員 「・・・」
首席仲裁員との激論が序章となって本審理がキックオフすると、初回の予備審理よりもはるかに激しい応酬論戦が繰り広げられる・・・