当社が元日本人従業員Aさんに訴えられた労働仲裁の続編。6月29日に本審理が当社顧客が傍聴する中で行われた。
本審理に先立っての事前準備について若干言及したい。まず、今回Aさんは日系人材紹介大手R社の斡旋で、採用から試用期間、不合格解雇まですべてR社担当T氏を通して行ったため、T氏の証言が極めて重要なエビデンスになる。
しかし、思わぬ展開に。「Tはすでに日本へ帰国して退職しましたので、証言することができません」。営業のときの熱心さがどっかに吹っ飛んでしまい、打って変って呆気ないR社の回答だった。
「立花さんが今回のことを一般公開して事例にされるようですが、当社のことを悪く書かないでもらえますか」
「悪くも良くも、事実のまま、伝えるのみです」
「あの~、R社R社って、当社は完全に中国現地法人ですから、日本のR社と関係がありませんので、日本を引っ張り込まないでください」
えっ、関係がない?電話を切って名刺を見ると、堂々と「株式会社R中国法人」と表記されているのではないか。法的には確かに別法人にはなっているが、都合で使い分けるのか・・・。ということで、私のブログで表記している「R社」は、すべて「株式会社R中国法人」であって、分かりやすく「R公司」としておこう。
R公司には、責任を追及するつもりはない。ただ、人材を斡旋し、せいぜい3か月の保証期間中に何について保証するか、何が保証範囲外なのか、権利・義務を明確にしてほしい。そう求めた。「人材紹介申込書」という紙切れ1枚で、法的権利・義務が明確になっているとはとても言えない。日本ならそれでいいのかもしれないが、中国の厳格な労働法令の下で、もう少し責任あるやり方を考えてもらってもいいのではないかと。この件について、現時点まだ回答がない。
R公司の証人・証言請求ができない。すると、すべて自力で証拠を確保しなければならない。証拠となりそうなものを整理すると、そのほとんどが電子メールだった。電子メールを証拠として法廷に提出するには、公証役人の公証が必要である。
電子メールを公証するために、電子メールの入っているパソコンを丸ごと公証役場に搬入しなければならない。パソコンを搬入し、その場で画面を呼び出し、パソコンの使用者が出頭し立ち会って、公証役人が電子メール画面の公証を行い、ビデオ撮影して関連証拠として公証証書に添付する。もちろん、ただではない。公証費用はバカにならない。
まだまだある。日本語のメールは、中国語に訳さなければならない。勝手に訳してはダメなので、専門翻訳会社の翻訳と認証が必要だ。これもコストがかかる。
何よりも、その証拠整備のために、スタッフや弁護士、人的資源を動員し、大量な時間を投入しなければならない。大きなコストがかかり、機会損失費用が発生する。経済学的には、和解で金を払ったほうが得だ。でも、そういうわけにはいかない。




