中国渡航ビザ発給中止から、日本人の劣等性を考える

<前回>『▶ K1193-<時論>日本人の中国渡航ビザ発給停止、裏側を見る』

 中国が日本人への渡航ビザ発給を中止した。その真の主因は何だったのだろうか。

 日本の水際対策は、米国発の強力な新株XBB.1.5に何ら措置も取らずに、中国の従来型感染を問題視し、中国からの入国者を狙い打ちする。日本は米国の飼い犬であり、飼い主に媚を売る。中国からみれば、こういう日本を懲らしめる必要があったのだ。

 中国外務省の汪文斌報道官は2023年1月11日の記者会見で、「日本は中国人の訪日ビザの発給を制限しておらず、中国の措置は対等性に欠けているのではないか」と問われたが、回答しなかった。日本のメンツを考え、紳士的な沈黙だった。汪報道官が「では、日本が対等措置を取ればいいじゃないか」と突き返してきたら、困るのは日本だろう。

 日本のパスポートは、世界最強のパスポートだ。2023年1月10日、英国のコンサルタント会社、ヘンリー&パートナーズは、ビザ(査証)なし渡航できる都市が最も多い国・地域ランキング(パスポートインデックス)を発表した。日本は5年連続で第1位となった。一方、中国のパスポートははるか下方の66位にとどまっている。

 しかし、世界最強のパスポートは、今や66位の下位国のビザ発給停止を食らっている一方、66位の下位国へのビザ発給を続けているのである。なんと皮肉だろう。ビザ発給停止の対等措置を取れない日本は、足元を見られるだけ。正直に言って、日本は中国に見下されている。口先ばっかり、行動は何も取れない。なんという情け無い頓馬ぶりだろう。

 ビザ発給停止は、序の口。発行済みビザの無効化という必殺技がもっと強力だ。台湾海峡戦争に日本が介入した場合、中国政府は、直ちに在中日本人のビザや居留証の無効化と期限付きの退去命令を発出することもあり得るだろう。在留日本人は10万人以上、全員を脱出させるには、大型機300機(便)以上が必要、1日10便でも1か月はかかる。

 この話は、私は2011年からセミナーやいろんな機会で発言し続けてきた。産経新聞には私の取材記事が何回も掲載されてきた。しかし、まともに準備に取り掛かった日本企業はごくわずかだった。

 中国事業にかかわる日本企業の無関心さはともかく、日本国民全体の対中姿勢の歪みがもっと大きな問題だ。どっぷり中国に浸かっての経済的対中依存にもかかわらず、8~9割の日本人は嫌中反中感情を隠そうとしない。人権やら環境やら、中国批判するなら、経済的なつながりをきっぱり切ろうではないか。

 それができない。中国のサプライチェーンだけは必要だ。中国の人権問題とか批判する人。じゃ、あなたの所属企業が中国ビジネスをやめるよう申し入れたらどう?それができないなら、せいぜいあなたの給料に入っている中国事業の売り上げ分だけでも人権活動組織に寄付しよう。なぜしないのか?

 さらにひどいことがある。あらゆる問題の責任を中国にだけでなく、自国の政治にも擦り付ける。愚民ゆえの愚政。忘れてはいけない。権力の不正、政府の愚鈍、行政の非効率、政治家の邪悪、メディアの偏向……。ソシャールメディアの時代、1億総評論家がまるで一人ひとり正義の代弁者。日本は独裁国家ならともかく、民主主義国家である。福澤諭吉『学問のすすめ』一節――。

 「西洋の諺に『愚民の上に苛き政府あり』とはこのことなり。こは政府の苛きにあらず、愚民のみずから招く災なり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり……」

 社会学者・東京都立大学教授の宮台真司氏は、日本人の劣等性を痛烈に批判する――。

 責任転嫁の他責化傾向、公共精神の欠如、多視点性の欠如、抽象化能力の欠如、お上にすがる依存心とそれによる思考停止など。そして、一団となる集団性がダウントレンドの時にマイナスに働く。私の言葉に置き換えると、無思考性・非論理性・均一性による玉砕・無理心中の空気的同調要請。ちなみに、個体のサバイバル行為は、「ズルい」と糾弾される。

 民主主義国家の責任の根源は、民にあり。そういうことだ。自身の反省しようではないか。なぜできないのか?我々日本国民は、なぜ、愚民になってしまったのか?愚民は諸悪の根源。平均民度が低いのは、米国も中国も日本も同じ。だが、米国は西側の主で強く、中国は独裁の主で強い。日本は何もない。残されるのは、愚と弱だけだ。

 日本は「民の主」の国であって、「民が主」の国ではない。今の日本には、真の民主主義も真の資本主義も存在していない。ある種の縁故主義社会である。日本人は基本的に「依存」志向の高い民族であり、「明君」が最適解なのだ。それゆえに、大政奉還の可能性を検討するのも民主主義の言論自由のうちではないか。

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