土鶏、バスに乗って上海へ

 アイさんが春節の里帰りから戻ってきた。故郷の安徽省からお土産に持ってきてくれたのが、「土鶏」、つまり地鶏。

 巨大だ。ターキーのような大きな土鶏だ。

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 その土鶏は、安徽省から生きたまま十数時間のバスの旅で上海にたどり着く。そして、上海に着いたアイさんが、タクシーの運ちゃんにタバコを一箱あげて特別に乗せてもらった。最後に、アイさんのアパートで〆られた土鶏が、我が家の冷凍庫に持ち込まれたという物流過程。

 土鶏というのは、土を踏んで、飼料でなく、食料を食べて育った鶏のことだと、アイさんに教わった。スーパーの店頭に並べられるブロイラー鶏が主流となったいま、かなり異色な存在だ。

 夕食の食卓に、濃厚な土鶏スープが登場した。濃厚な味、何と言ったらいいだろう。とにかく、「鶏のスープ」らしいスープで、激旨。そして、鶏肉は通常の白ではなく、すっぽんのようなピンク色をしている。運動の多いことから、血の巡りが良くなっている証拠なのだろう。

 いやいや、ご苦労様。アイさんに鶏の代金を支払おうとすると、何が何でも受け取ってくれなかった。

 熱々の鶏スープで身も心も温まる。