異端児中国人万歳、反骨精神の持ち主に喝采

 写真には、五星紅旗が見えない。けれど、彼女は紛れもない中国人である――。李娜選手がテニス全仏オープンの最高峰に登り詰めた。アジア勢として、初の四大大会制覇を遂げた。中国人の誇りである。また、アジアの誇りでもある。中国のスポーツ史だけでなく、中国史の一ページに刻んだ。

58518_2パリの空の下で輝く中国人

 中国人にしては、彼女は、反骨精神の異端児だ。国家体制下のスポーツ界に反感を覚え、「お国のため」には馴染めなかった。スポーツは国威発揚の手段、国家がスポーツエリートを養成する。このような中国では、彼女は集団主義に真っ向から反発する個人主義者として、異端児扱いされる場面も多かった。

 でも、彼女はサクセスストーリーのヒロインになった。テニスの強さに加え、飾り気のない性格やユーモアのセンスで欧米人を感服させたという。彼女は、どんな国家宣伝よりも、中国のソフトパワーを世界に見せつけた。まことに、美しい中国人である。

 中国人が個人主義といわれるが、私は違うと思う。意外にも中国人には普遍的に集団主義者が多い。独自のネットワークの中で、正統派や慣習にしがみつき、「正解は一つ」とする人が多い。常識逸脱の発想、独自のアイディアないし反骨精神の持ち主は極端に少ない。

 中国に、いま必要とするのは、李娜選手のような筋金入りの個人主義者である。独自でものを考え、ものを創造し、世界に躍り出、世界のルールで勝者になる。このような人が増えれば、中国は本物の強国になる。

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