芸術と技術、ピアノ弾きもロボット時代の英才教育

 小澤征爾氏が率いるサイトウ・キネン・フェスティバル松本(上海公演)はいよいよ終盤に差し掛かる。9月10日(土)は、ピーター・ゼルキン氏のピアノ・リサイタル。

 上演前の上海大劇院では、深刻な声で異例の場内放送が行われる。

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 「本日来場のお客様でお子様連れの方が大勢います。本日のプログラムは、正直お子様に適していません。せっかく来てくれましたので、良しとしますが、ただし、上演中は、くれぐれも雑音を出さないように子供の監督管理を保護者のみなさんに厳重にお願いします。上演を継続鑑賞できない場合は、直ちに、静かに退場していただきますので、ご注意ください」

 子供にピアノを習わせる中国人の家庭が急増していることで、英才教育の一環として、ピアノコンサートに連れてきたのだろう。欧米では、コンサートに小さな子供を連れてくることなど考えられない。コンサートはあくまでも大人が行く場所だ。国も違えば状況も違うが、さすが劇場も困ったのだろう。

 「どうですか、今日のピアノ、感想を言いなさい。弾き方が上手でしょう」。休憩時間に、後ろの列の若いお母さんがしつこく娘に問い詰める・・・

 結局、弾き方か。芸術をもまず技術的に考えるのか。ピアノ弾きならロボットでもできる時代なのだから・・・。芸術って何か、まず親たちには教育が必要なようだ。

63839_3演奏を終えるピーター・ゼルキン氏

 今日のプログラムは、以下の通り。

 ●シェーンベルク:3つのピアノ小品 Op. 11
 ●ベートーヴェン:ピアノソナタ第31番変イ長調作品110
 ●ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲作品120