<雑論>企業の内部留保 / 対中日本水産物輸入再開 / 認知的不協和 / 借金 / マレーシア移住

● 企業の内部留保

 自民党総裁選に立候補している高市早苗経済安全保障担当相は、賃上げや投資促進のため、上場企業の行動指針を定めたコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)を改定し、内部留保の使途を明示させると主張した。

 企業でなく個人に置き換えると、預金使途を明示しろということになる。不確実性の時代であるから、将来の不安、リスクに備え手元になるべく多くの現金を用意しておいたほうがいい。企業も個人も同じだ。資本主義の市場経済で、そんなことで政府が干渉するのがおかしい。

 内部留保は、解雇自由化、大規模リストラに備えての補償金原資だ。そういう会社も多い。日本企業の人件費は、固定費だから内部留保をそこに使うことができない。変動費として賃金の増減も解雇も自由にできないのが原因だ。

● 対中日本水産物輸入再開

 福島原発汚染水に対する監視に、中国の参加を容認。その代わりに、水産物禁輸の緩和を中国側が実施。結局、日本が折れた。だったら最初から中国を監視団に入れればよかったのではないか。問題は、折れたかどうかではなく、なぜ「折れた」と世間が思ったかだ。折れるのは別に悪いことではない。「折れ方」が戦略、芸術である。

 しかも、ことはそう簡単ではない。この1年以上の期間で、中国国内ではほとんどの水産物は、代替仕入れルールが定着した。今更日本産を再開しても、どうだろうか。中国業者→日本業者、「もう、他から仕入れてるんですけど、日本産を買ってほしかったら、もっと安くしてよ」。他方では、中国業者→他国業者、「日本産の輸入が再開しました。このまま買い続けてほしかったら、もっと安くしてよ」と、結局、日本業者と他国業者の価格競争になる。

● 認知的不協和

 認知的不協和という理論を使って、様々な現象を解釈できる。たとえば、日本の対米・対中関係を例にしよう。

 日本人は、アメリカが原爆を投下し、数十万人の日本人が犠牲になったという歴史的事実と、戦後アメリカが日本を占領し、米式民主主義の導入と戦後復興に関与したという現実との間で強い認知的不協和を感じた。これを解消するために、日本の戦後教育は後者の貢献を強調し、不協和を低減した。

 アメリカの戦後の日本への関与は、日本の経済復興に大きく寄与したというポジティブな認識と、同時に日本を属国化した、すなわち主権が制限されたというネガティブな認識の間に矛盾が存在する。この矛盾が新たな認知的不協和を引き起こした。この不協和を解消するために、日本政府は復興の重要性を強調する一方、日米安保条約を「現実的な選択肢」として受け入れることで、属国化の側面を合理化する。

 日本人は中国のサプライチェーンに依存する一方で、それを経済安全保障上のリスクと捉える状況も、認知的不協和の一例といえる。「中国に依存することは経済的に不可欠である」という認識と、「中国への依存はリスクである」という認識が矛盾しており、これが認知的不協和を引き起こす。

 どうすればいいのか?中国以外に新たなサプライチェーンの構築によって、認知的不協和を解消することができる。しかし、サプライチェーンの再構築には多大なコストがかかる。そのコストを引き受けたくない。これもまた新たな認知的不協和になる。このように今の日本人は認知的不協和の連鎖に陥っている。

 米中という2つのグループを考察してみよう。

 米国グループは、いわゆる「民主主義」「自由」「人権」といった価値観の共有、宗教や人種(日本だけが黄色人種の二等国)の同質性で固まっている。経済的利益はほぼ米国が独占。他方、中国グループは、各国の政治体制も、理念も、宗教も、人種も全てバラバラ。共通しているのはたった1つ、経済的利益だ。故に利益の分配にバランスと合理性が必要。どっちがメンバーに公平だろうか。

 米国グループは「民主主義」「自由」「人権」といった価値観を共有し、それらを掲げる国々が集まるグループである。しかし、実際には、これらの価値観が必ずしも全てのメンバー国で均等に実践されているわけではなく、経済的利益や地政学的な理由で対立することもある。この矛盾が認知不協和を引き起こす可能性がある。

 例えば、米国が自由や人権を強調しながらも、経済的利益や安全保障上の理由で人権侵害が行われている国々と同盟を組んだり、軍事的支援を行ったりする場合、その矛盾が米国や同盟国の間で認知不協和を引き起こすかもしれない。この矛盾に直面した際に、米国グループのメンバー国や個々の国民がどのように反応するか(例えば、矛盾を無視する、価値観を再評価する、行動を変更するなど)によって、そのグループ内での調和が保たれるか、さらに不協和が深まるかが決まるであろう。

 一方、中国グループは政治体制や価値観が異なる国々が経済的利益を共有するために集まったグループである。このグループでは、共通の価値観に基づく行動や理念の強制が少ないため、認知不協和が発生する可能性は相対的に低いかもしれない。ここでの調整は、主に経済的な合理性と利益の分配に焦点が当てられる。

 したがって、米国グループにおける認知不協和理論は、メンバー間の価値観の不一致やそれに伴う行動の矛盾を説明するために有効であり、その結果としての緊張や調整の必要性を理解する上で役立つかもしれない。ただし、中国グループのように、価値観の共有よりも経済的利益を重視するグループでは、認知不協和理論はあまり適用されない可能性がある(認知的協和であると)。

● 借金

 某友人から、資金調達したいと借金の依頼がきた。私は、「良好な友人関係の維持という観点から、お金の貸し借りだけはやめよう。ただし、それ以外の支援なら、できるところまでさせてもらおう」と答えた。すると、「お金だけ調達したい。ほかの支援は要らない」と返事がきた。

 実は、「お金を調達する方法なら、アイディアや情報を共有できるかも」と言いたかったのに、残念だ。老子がいう。「授人以魚 不如授人以漁」ーー。「人に魚を与えるよりも、漁を教えたほうがその人のためになる」と。しかし、魚だけ欲しがる人には、漁を教えようがない。

 「お金は貸せないが、借り方なら教えることができる」と、私はいう。まず、世の中にはお金を貸さない人もいれば、貸す人もいる。貸す人を物色するのが前提だ。次に、どうしたら貸してくれるか、佐藤優氏の「内在的論理」で相手の論理を把握する必要がある。最後に、相手の論理を駆使して借金を断れないようなアプローチをかければいい。すると、借金できる確率がぐーんと上がるはずだ。具体的な内容は、ケースバイケース。

● マレーシア移住

 MM2H。マレーシア移住の新規定では、マレーシア政府への上納金と手数料だけで1000万円を超える。もし、あなたの資産が1億なら、移住で1割がまず飛ぶ。やりますか?では5億の資産なら、2%。ならやるかもしれない。中国人のプチ富裕層に5億円程度の資産を持つ人がたくさんいる。彼らが新MM2Hのメインターゲットだ。しかし日本人の場合、野村総研の統計では5億円の超富裕層で総人口の0.2%。言ってみれば、今の日本人は、マレーシアに移住できる人は100人に1人もいない。だから、新MM2Hは、貧しい日本人のためにあるものではない。

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