KL「亀寿司」、広告を打つ店と打たない店の経済学

 マレーシア移住権の取得を祝って、クアラルンプールでは、「亀寿司」というすし店を妻と二人で訪れた。

83706_283706b_2場所の分かりにくいKL「亀寿司」

 広告も打たなければ、派手な宣伝もしない店を探し当てるのが私の趣味だ。なぜなら、広告代を削った分、料理やサービスにより多くの資源(コスト)を当てられるからだ。それだけ単純な原理だ。

 広告会社の方がこの記事を読んで怒るかもしれないが、あくまでも私個人的な価値観を伝えるまでだ。私自身、ほとんど広告を見ないし、完全信用しているわけでもない。唯一の例外は、航空券の広告。商品の中身である航空会社の安全性やサービスは、別材料で判断し、広告掲載の価格で買い得感があれば、購入する。それでも、「激安○○○元(円)」とデカデカと広告を打っておきながら、実際に電話すると、一番安い値段の座席がすでに完売したと、他社と変わらない値段のものを勧めてきたりする業者がいる。もちろん、そういう業者からは絶対に購入しない。

83706_383706b_3KL「亀寿司」

 レストランもデカデカと広告を打っている店には、私は基本的に行かない。広告を打つ予算があったら、もう少しマシな食材を仕入れて、職人の腕の向上やサービスの改善に力を入れてほしい。ついでにいうと、私自身の会社も広告を打たない主義である。

 クアラルンプールの「亀寿司」は、本当に場所が分かりにくい。ローカルの集合住宅の1階に位置し、番地もあってないようなものだ。「私自分でも、よく迷う」。そこまでいう店主を見れば、返す言葉がない。

 目抜き通りや一等地に位置すれば、それはすぐに店は見つかるが、大抵テナントの家賃が高く、店の経営を圧迫する。その分、商品(料理やサービス)に当てられる資源が目減りし、結果的にツケが客に回ってくる。もちろん、広告を打てば、最終的に広告料も客が負担するようなものだ。

83706_4KLの夜景

 消費者として、自分の財布を気にしても、業者の財布は気にしないのが常。私は職業柄、経営コンサルタントの職業病的に業者の財布を勝手にイメージしたりする。誠に失礼とは思うが、この癖は死ぬまで治らないだろう。

 そこで、概ね三通りの反応をする。もう二度と来ることがなかろうという店には、不満があってもクレームをつけない。リピーターになりたいと思う店には、問題があればクレームをつけるだけでなく、逆に、「おい、お宅の料金が安すぎるよ、もう少し値上げしろ」という場面もある。

 良い業者には、儲かってほしい。儲かれば、長く付き合える。消費者の長期利益にも合致する。クアラルンプールの「亀寿司」もこのような一店である。