<雑論>トランプの対中政策 / アメリカは偉大であるか? / 文明の生まれ方と人種の戦い

● トランプの対中政策

 トランプ新政権の閣僚は、対中タカ派が勢揃い。だから、反中親台だという分析が多い。本質を見誤っている。「反中」は、トランプにとって、目的か?手段か?明らかに手段だ。トランプの目的は利益、「America First」だ。対中取引でより多くの利益を引き出す、という目的達成のために、手段を強化する。だから、対中タカ派を総動員するのは当たり前だ。

 対中取引では、意図的に中国にとって最悪の状況を作り出してから、譲歩する。交渉の鉄則だ。トランプ新政権が悪人役、イーロン・マスクは仲介の善人役。役割分担も決まっている。

 貿易戦争は確かにあるだろう。トランプは中国製品に最大60%の関税を課すと示唆。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、こうした水準の関税は米中貿易を壊滅させると分析している。しかし、中国に与え得る影響は?中国の対米輸出は、GDPの約3%にすぎず、ローエンド製品がほとんど。中国製品を買うのは米国の中下層階級であり、彼らが高関税の被害者になる。

 中国は騒ぐだけで、実害が限られている。逆にアメリカでクリスマスツリーを作れるのだろうか?

 米国では2種類の孤立主義が台頭している。1つ目は、世界に関わらないとして同盟や国際枠組みを拒絶する立場だ。2つ目は、欧州も中東も優先事項ではないとして、中国の脅威だけを重要視する考え方だ。と、読売新聞はこう分析している。それが正しい定義だとすれば、トランプの第1期大統領は、2つ目の孤立主義だったが、第2期では1つ目に転換すると、私が見ている。

● アメリカは偉大であるか?

 「USA is great enough!」――アメリカはすでに十分に偉大である。200年足らずで世界の頂点に上り詰めたその歩みは驚異的だ。しかし、その成長の速度に伴う衰退の予兆も否めない。文明の発展には千年単位の時間が必要だが、アメリカには本物の文明があったのか。それとも、擬似的な文明だったのではないかと思えてならない。

 「ドッグイヤー」という言葉がある。犬にとっての1年が人間の7年に相当することから、急速な成長が早期の衰退を招くという意味だ。文明もまた、この自然の摂理から逸脱することはできないだろう。「Make America Great」というスローガンを吟味するに、「偉大さ」を人為的に「Make(作る)」ことが果たして可能なのかという問いが浮かぶ。この問いを発するのが哲学である。

 短期間に「後天的」に成し得ることと、そうでないことがある。アメリカには「先天的」に欠如しているものがある。それは哲学である。そして、哲学こそが戦略を生むのだ。アメリカのビジネススクールでは経営戦略が盛んに教えられているが、国家としての戦略、特に長期的な視野に立つ戦略は皆無に等しい。

 アメリカの「偉大さ」は「体力」「財力」という側面に依存しており、これらも既に衰退しつつある。一方で「智力」に基づく偉大さは見受けられない。ここで私が言っているのは、単なる「知」ではなく、「智」である。

 それでも、アメリカには「偉大さ」がある。トランプがそれだけ失敗しても、ホワイトハウスに舞い戻ったのである。

 トランプはかつての政界における「異端」から、現在では少なくとも共和党内で「主流」へと変わった。トランプが掲げる「アメリカ・ファースト」や、グローバリズムへの批判的な姿勢が、「新たな主流」として多くの国民に支持されているのだ。これ自体がアメリカ政治の独特なダイナミズムを示している。

 トランプは一時、数多くの訴訟に巻き込まれ、暴言や過激な発言で多くの批判を浴びてきた。しかし、彼の支持基盤は揺るがず、2020年の大統領選挙に敗北した後も、共和党の支持者の間でカリスマ的な存在としてその影響力を保ち続けている。アメリカでは、こうした「失敗」や「異端」に対する寛容さ、そして再起を可能にする柔軟な社会構造が存在している。日本にはない。

 日本の文化では、失敗やスキャンダルが政治家のキャリアに致命的なダメージを与えることが多い。一度大きな挫折を経験した政治家が再び主流に返り咲くことは非常に稀である。アメリカのように「多様性」を尊重し、「再挑戦」を容認する文化は、日本にはほとんど根付いていない。非常に残念なことだ。

● 文明の生まれ方と人種の戦い

 ユーラシア大陸には、4000年を経て今なお続く中華文明やインド文明、ロシア文明、イスラム文明といった大陸系文明が存在する。これらと異なり、アングロ・サクソン系を代表とする海洋国家の勃興は、略奪や殺戮、植民地化を土台に築かれてきた。地理的・地政学的観点から見ても、その成り立ちには大陸系文明とは明らかな違いがある。

 たとえば、中華文明は黄河と長江を基盤にして4000年間、同じ場所に根付いてきた。しかし、北欧の片隅から発したアングロ・サクソン人は、ブリテン島、北米、豪州などへ広がり、支配を強めた。人権を唱えるアングロ・サクソン人こそが、歴史上最も人権侵害を犯してきた人種ではないかと疑問を抱く。

 日本もまた海洋国家である。だが、日本はかつて懸命に中華文明を取り入れ、その伝統を尊んできた。世界で唯一漢字を公用語として残す日本には、文明の伝承に誇りを持つ理由があるといえよう。これは少々粗い考察だが、文明の次元からみれば重要な視点である。

 日本人は、アングロ・サクソンの白人と戦った初の黄色人種だった。勇敢で、偉大な存在であった。結果として敗れたが、今や同じ黄色人種である中国人がアングロ・サクソンに挑み、勝利の兆しを見せている。

 日本人がこれに嫉妬し、中国人の足を引っ張る理由は見当たらない。歴史を顧みると、数十万の日本人の命を奪ったのは中国ではなくアメリカであり、日本を植民地化したのもアメリカである。日本が中国を侵略した歴史はあれど、中国が日本を侵略した歴史はないのだ。よく考えてみるべきである。

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