E&Oホテル(1)~古い館のかび臭さに酔い痴れる

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88560_1E&Oホテル(イースタン&オリエンタル・ホテル)

 KL2泊、イポー3泊に続き、視察ツアーの最後はペナンで3泊。ペナンでの最大な楽しみは、あのE&Oホテル(イースタン&オリエンタル・ホテル)に泊まることだ。

88560_288560b_2ホテルの光と影

 エキゾティックな海辺の旧市街地、世界遺産ジョージタウン。そのさらに海寄り、といってもシーフロントの真正面に建つ白亜のコロニアル建築、それがあの名門E&Oホテルだ。宿泊料はKLの上級ラグジュアリーホテルより安いが、格式でいえばマレーシア随一といって差し支えないだろう。

 創業1884年、かつてスエズ以東にある最も美しいホテルといわれたほどの名門である。創設者はシンガポールのラッフルズを創ったサーキーズ兄弟。

 私は古い館に泊まるのが大好きだ。文化財級の邸宅から古城まで、幅広く旅先の宿として泊まってきた。歴史が好きでこだわって建築そのものを研究しているわけではない。古い館の空気を吸いながら一晩や二晩の住人になってみたい。単にこのような気持ちに駆られるだけだ。古いだけにその空気は時々少々かび臭い。いや、むしろその方がよい。そのかび臭さを求め、まるでグルメが上等なブルーチーズにありつき、その独特な香り(かび臭さ)の虜になるようなものだ。

88560_388560b_3ホテル全室オールスイート

 古い館は新しい建物にない丸みと貫禄をもっている。時代の変遷が様々符号を館のいたるところに残し、やがて一種のかび臭さヘと昇華してゆく。それが最終的に空気の成分となり、旅人の静かな寝息とともに体内に吸い込まれ、溶けていき、そして爽やかな目覚めと共に新たか活力へと生まれ変わる。

 生きる喜びは、歴史を意識することによって蘇る。長い歴史の流れに、自分自身の存在がそれだけ微小で取るに足らぬことを改めて思い知らされると、生きる喜びと幸福が増幅する。

 命とは旅人である。旅は目的地の到着が目的でなく、旅路そのものに意義が見出される。世界中様々な場所で様々な古い館に投宿し、その空気を吸い、漂うかび臭さを求め、そしてそれに酔い痴れる。――私の旅のスタイルだ。

88560_488560b_4ホテルの客室

 アルバムをめくりながら、これまで泊まった古い館の数々に宿る思い出が鮮明に蘇る・・・。

 マンダリン・オリエンタル・バンコク(タイ)、ザ・ペニンシュラ香港(香港)、ホテル・マジェスティック・サイゴン(ベトナム)、メトロポール・ハノイ(ベトナム)、セターパラス・ビエンチャン(ラオス)、マンダリン・オリエンタル・ハイドパーク・ロンドン(英国)、ザ・ランガム・ロンドン(英国)、ローズ・オブ・ザ・マナー・コッツウォルズ(英国)、ホテル・レジーナ・パリ(フランス)、マンダリン・オリエンタル・ホテル・プラハ(チェコ)、ホテル・ルージュ・チェスキー・クルムロフ(チェコ)、ポサーダ・デ・パルメラ(ポルトガル)、ザ・ホテル・ウィンザー・メルボルン(オーストラリア)、北京中国会(会員制チャイナ・クラブ内)(北京)、フェアモント・ピース・ホテル上海(和平飯店)(上海)、旧・興国賓館(上海)、錦江飯店(上海)、ポサーダ・デ・サンチャゴ(マカオ)、ジャイ・マハール・パレス(インド)、ザ・フォート・プリンターズ・ホテル・ゴール(スリランカ)・・・など。

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