誰にでもわかるように、マルクス主義を簡単に説明してみよう。
マルクス主義は、「現実論」と「理想論」という2つの部分に分けて考えると理解しやすい。
前半の「現実論」では、人間はそれぞれの階級に属し、社会は階級闘争の舞台となっているとされる。政治的な理念よりも、最終的には経済的利益の争奪が人間の行動を左右するという本質の洞察だ。
一方、後半の「理想論」では、階級闘争を終わらせ、すべての人が平等に暮らせる理想の社会、すなわち共産主義を目指すとされる。
結果はよく知られているとおり、現実論は鋭い洞察だったが、理想論の実現は破綻し、大きな災厄をもたらす結果に終わった。この失敗により、共産主義は今やタブー視される存在となっている。ただし、20世紀の共産主義運動が失敗に終わった原因が、マルクス主義そのものの理想の欠陥に起因するのか、それとも社会・政治的な実行の問題によるものなのかは、学説や解釈によって見解が異なる。
宗教は現実の此岸を認識した上で、理想の彼岸を美しく描くものだ。しかし、マルクス主義の信奉者たちは此岸に留まることなく、理想の彼岸を追い求めて突き進んでしまったのである。宗教が理想と現実の架け橋として「信仰」を通じて個人に働きかけるのに対し、マルクス主義は個人よりも構造や制度を重視し、そこに対する「行動」を促す点で異なる。
中国共産党は、マルクス主義の前半にあたる現実論を堅持しつつ、後半の理想論は放棄した。「中国の特色ある社会主義」として知られるその姿勢は、共産主義を目指していないことを明確に示している。つまり、中国共産党はマルクス主義の現実論を土台に、理想論は追求せず現実的な政策を選択したのである。