脱中国(2)~逆立ちしてもできない日本人

<前回>

 某日本人は、「私は中国製を使いません。脱中国です」と豪語する。思わず笑いだした。サプライチェーンという現代資本主義、特にグローバル経済の基本的な構造を理解できていない、いや、理解しようとしない人なのかもしれない。

 「Made in China」とは、最終完成品の原産国標識である。サプライチェーンとは、製品の原材料、部品の調達から、半製品、完成品、在庫管理、配送、販売までの全体の一連の流れのことをいう。 その流れのなかに、「中国」という成分がまったく絡んでいない製品は今、日本の市場にどのくらい流通しているのか、逆に興味があるくらいだ。

 iPhoneを使っているならば、このデータに目を向けてほしい。アップルが公表したところによると、2020年のサプライヤートップ200社、中国メーカーが全体に占める割合は19年の52%から57%に上昇した。脱中国なら、6割もの部品が中国製というiPhoneを即刻ゴミ箱に放り込むべきだろう。

 外資が中国からベトナムへ工場移転したなら、立派なベトナム製造になる。果たしてそうなのか。ベトナムに引っ越した外資のなかに中国資本もたくさん含まれている。彼らは付加価値の低い労働集約型の部分をベトナムに移管し、ある意味で現地労働者を搾取しているのである。その「Made in Vietnam」は中国と無関係といえるのだろうか。

 食品関係は、日本市場には中国製が浸透している。調味料専門業者の知人が教えてくれたのだが、グルタミン酸ナトリウム、核酸調味料、グリシンなど、ほとんどの食品に中国製が使われている。米加工品も少しベトナムに移ったが、まだまだ中国製が主力だという。

 「衣食住」の「衣食」はともかく、「住」はどうだろう。日本国中に不動産(土地・建物)を買い漁って、日本人サラリーマンや学生相手に賃貸ビジネスを行う中国資本、リゾートホテルや旅館、Airbnb民泊経営に手を出している中国資本はあちこちにある。脱中国なら、まず所有者や資本関係を根掘り葉掘り調べてみようか。

 衣食住という生きているうちだけではない。日本人が死んでも中国の世話になる。東京23区にある7か所の民営火葬場は、そのうち6か所が中国資本である。脱中国なら、都民は都外で死んだほうがいいとでもいうのか。そのうち全国の火葬場が中国資本に買われたらどうしようか。

 このように、「脱中国」、中国サプライチェーンから抜けられる日本人は1人もいない(抜ける方法があれば教えてもらいたい)。善悪の価値判断でなく、これは事実認識だ。

 最後に、脱中国のコストを見てみよう。日本経済新聞(2022年10月22日付記事)によれば、生産拠点移管・撤退で脱中国した場合、年13兆7千億円ものコスト上昇になるとの試算がある。トヨタ純利益5年分に匹敵する。このコストは誰が負担するのだろうか。日本国民の中、愛国心を燃やして肩代わりしてくれる人がどのくらいいるだろうか。

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