汚染水問題(3)~インチキ国家の本質、「廃棄水」と「汚染水」と「トリチウム」

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● データ・情報操作のメカニズム

 「汚染水」と「処理水」の区別よりも、「廃棄水」と「汚染水」の区別がはるかに重要だ――。

 「廃棄水」は、原子炉の正常な冷却水であり、放射性物質と直接接触することはない。ただ含有する可能性はある。「汚染水」は、放射性物質を直接通過した冷却水である。トリチウムを含む64種類の核放射性物質を含み、「廃棄水」より危険度がはるかに高い。

 福島から放出されたのは、後者の「汚染水」である。「廃棄水」も「汚染水」も処理されたうえで放出された場合、どれも「処理水」と呼ばれ得るが、その出自が全然違う。日本のメディアは、重要な概念の区別を意図的に回避しているかもしれない。福島の場合、正確に言うと、「処理汚染水」である。

 トリチウム、トリチウム、トリチウム。

 ――典型的な論点のすり替え。日本政府は意図的に問題をトリチウムという一点に集中する。有害性や危険性は、トリチウムだけではない。なぜ堂々と第三者検測をさせられないのか。トリチウム以外に怪しいデータが出るのを恐れているのではないか。さらに周辺国の「廃棄水」と福島の「汚染水」という2つの全く異質な概念を混同し、「トリチウム」という単一基準に集約してしまう。

 データ操作、情報操作の手法であり、インチキ国家の所為だ。

● 日本の海洋放出に反対する理由

 このたびの日本の汚染水海洋放出に、私は反対し、中国をはじめとする各国の抗議と中国による日本産水産物全面禁輸を含む対抗措置を支持する。その主な理由は次の6点にまとめたい。

 1. 中国など各国の原発から排出している「廃棄水」は、原子炉の正常な冷却水であり、放射性物質と直接接触することはない。福島から排出しているのは、事故で溶けた炉心に接触した「汚染水」である。「汚染水」と「廃棄水」は全く異質なものである。

 2. 「汚染水」は、放射性物質を直接通過したものであり、トリチウムを含む64種類の核放射性物質を含有し、「廃棄水」より危険度がはるかに高い。現状では、トリチウム以外の放射性物質の検証がほとんど行われていない。多様かつ多大なリスクが潜んでいる。

 3. 日本は海洋放出以外の代替案や選択肢について議論・検討もしていなければ、近隣国など利益関係者と協議もせず、一方的に海洋放出を決めた。さらに他国の専門家による検査も許していないことから、透明性や公開性、公正性が著しく欠落している。

 4. 国際原子力機関(IAEA)の調査報告書にこう記載されている。「推奨するものでも、承認するものでも、ない」。しかし日本政府はあたかもお墨付きを得たかのように、日本国内や諸外国の反対を「非科学的」「外交カード」などと決めつけている。そのこと自体が、非科学である。

 5. 日本は海洋放出にあたって一方的に「安全だ」と謳いつつも、将来に向けて地球範囲内に生じ得るリスク・災害とその対策、被害が発生した場合の責任所在、賠償条件等については一切提示していない。極めて無責任である。

 6. 上記各項について、日本政府も日本国内メディアも回避し、真正面から向き合おうとしない姿勢は不誠実であり、信用・信頼を失わせるものである。

● 「複合汚染」とインチキ国家

 2023年8月21日、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏が東京で「複合汚染:医師の目から見た日本の破壊」と題した講演を行った。

 「複合汚染」とは、放射線被爆、農薬などの化学物質、遺伝子組み換え食品など、現代人の健康を害するさまざまな問題を総括した呼称である。西尾氏は現在の諸問題について、「ウソ」と「インチキ」を指摘した。一部抜粋する――。

 「自然破壊もどんどん進んでいる。こんな、『科学のイロハ』もわかってないバカどもが、お金儲けのために騒いでいる。それに乗っかってる。で、ジャーナリズムも、まともに、物事を科学的に考える人は、ほとんどいません。で、事故が起こってもにわか勉強して、嘘だらけで書かれているICRP(国際放射線防護委員会)の教科書を読むものだから、まったく真実は伝わらない。たまに、まともな記事を書いてもデスクのレベルで止められる」

 「今のジャーナリズムは、膨大に、内閣機密費のお金が流れているんですよ。要するに、何千万という単位で、大手のジャーナリズム、テレビ局や新聞社に寄付されているから、もう本当に『御用機関』になっているんですね。だから大本営発表しかしていないんですよ」

 「それをみんな鵜呑みにしてるわけだよ。昔よりSNSが普及したり、テレビやコンピューターが普及しちゃったら、洗脳しやすいんですよ。みんなを馬鹿に(することが)できるんですよ。洗脳しやすい、より危険な状態になっている。しかも、日本人は平和ボケして何にも自分の頭できちっと考える人がいない。もう今日の結論ですよ。簡単に言えば。嘘だらけなんだからね、金儲けのために。国民は金儲けの対象なんだ」

 講演中に言及された医学・疫学・公共衛生系の事例は、私は専門家ではないので、コメントを差し控える。ただ「大手ジャーナリズムの大本営発表を鵜呑みにする日本人は、平和ボケして何にも自分の頭できちっと考える人がいない」というくだりについては、私の実体験に一致している。

 「まともな記事を書いてもデスクのレベルで止められる」という実体験は、私自身も何度もあった。今の私は、メディアに寄稿したいと思わないし、寄稿しない。意味がないからだ。「莫大なお金が、大手ジャーナリズム、テレビ局や新聞社に寄付されているから、『御用機関』になっている。だから大本営発表しかしていない」という西尾氏の仮説は、かなり説得力がある。

 故に、やっていることは、民主主義も独裁専制も基本的に同じだ。民主主義というカモフラージュを施しただけに、より悪質である。

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