汚染水問題(1)~処理水とは、「政治的処理」を施された水のことだ

● 日本産食品が危ない

 8月24日、中国は日本の水産物の輸入を即日から全面禁止すると発表した。農水省の統計によると、2022年の水産物の輸出総額は3873億円で、輸出先の1位は中国、2位が香港。水産物輸出総額に占める中国の比率は22.5%、香港は19.5%、合計で42.0%にも達する。中国による水産物の輸出停止措置は、日本の水産物輸出、水産業にとっては大きな打撃となる。

 8月25日、中国は食品業者に対して日本の水産物の加工、調達、販売のすべてを禁止すると発表した。違反行為は厳しく取り締まるとしている。加工、調達、販売までの全禁止になると、経由地輸入の道も閉ざされる。

 中国の日本料理店の店頭にはまもなく、「当店では、日本輸入物を一切に使っておりません」の張り紙が出るだろう。日本人シェフが客に「日本物ではないから、ご安心ください」と苦渋に満ち表情でアピールせざるを得ない。

 中国のSNSでは日本産食品の不安をあおる情報が拡散し「もう日本産品は買わない」などの投稿が相次いでいる。風評被害はもはや水産物だけではない。私の当初からの予想通り、中国はこれを機に段階的に日本の加工食品、農産物、そして日本酒を含めて全面規制に踏み切る可能性がある。風評が日本食品全般に広がるのは、時間の問題。中国市場では、日本産食品が消えても大した損害を受けないからだ。

 ちなみに少し前、中国の日本酒輸入業者に非日本産日本酒の輸入を勧めたが、断られた。日本産の方が断然競争力があって円安も追い風だから。しかし、政治的要素を折り込んで考えると、また別の景色が見えてくる。視座、視線、視野の違いだろう。繰り返しているが、経済は純粋な経済でなく、政治あっての経済だ。

● 科学性と政治性

 「汚染水」でも「処理水」でもどうだっていい。「科学的根拠」というのは、逃げ道であることに気付いてほしい。数年後、問題が出た場合、科学的根拠があっての政府決断だったので責任はない。科学的根拠があっての悪い結果は、「予想外」「未曾有」であるから。一般国民にとって、いざというときに誰が責任をとってくれるのかだ。政治家はみんな「免責保険」に入っているから。

 某識者が言う。「科学は人を欺く。研究費の前に科学者の良心は無力だ」。科学は、社会科学だけでなく、自然科学も含む。特定の結果を意図的に導き出すために、データの取り方と扱い方はいくらでも弄れる。汚染水は、「政治的処理」を施された水であり、飲めるレベルにも到達する。技術が芸術に昇華する瞬間だ。

 中国も韓国も同じ汚染水を流しているから、日本はなぜいけないのか、と、お国のために正義を語る人もいる。幼稚園児程度の発言だ。では質問、中国が日本の水産物を禁輸したが、日本はなぜ対等措置を取って中国産を禁輸しないのか?「なぜ」を問わない、問えない、問おうとしない、問う力・思考力のない大衆が大多数だから、政治が成り立つ。

● 日本人は政府の味方

 汚染水・処理水の問題では、意外にも多くの日本人は、政府に同調している。なぜ?

 まずは、日本在住者の全員は、結局日常生活ではこの問題を完全回避できない。故に、「大丈夫だ」と自分に言い聞かせ、政府が謳う「科学」を信じよう(信じるしかない)という心理が芽生える。反証に目を向けたくない。希望的観測というバイアスがかかっている証拠だ。

 ただ日本に住んでいても、リスクを最小限に抑えることは可能だ。知恵ある人たちはそう実践している。もちろん彼・彼女たちはそのノウハウを公表しない。社会的に叩かれるからだ。さらに自分がリスク回避しながらも、表向きには「大丈夫だ」と吹聴する層も存在するだろう。いずれも生きる知恵なのだから。

 次に、中国に関して、禁輸措置は非常に政治的だという意見がある。私もそう思う。だったら、日本政府は、なぜそれを想定しなかったのか、なぜ対応できなかったのか、なぜ対等な対抗措置を取れないのか、といった問いが浮上する。結局、中国にはすべてお見通しだ。

 中国は政治的に汚染水を利用したとは言え、汚染水を政治的に処理して放流したのは日本政府だった。汚染水あるいは処理水、どうだっていい。私は、中国の日本水産物全面禁輸措置を支持する。日本の対中対等禁輸措置(あれば)をも支持する。いずれも、それぞれ国民の食の安全につながるからだ。

● 放流の本質

 まず、日本の特権階層(財閥派閥政治等々)の利害関係――。

 ① 水の貯蔵や他の処理方法では、コストがかかりすぎる。
 ② 土地の利用ができず、機会損失が大きい。
 ③ 水が日本国の陸上に存在する限り、いつまで経ってもイメージや風評の払拭ができない。記憶からの消去、忘却効果は水の物理的消滅しか方法はない。

 次に、アメリカの特権階層の利害関係――。

 ① 放流によって日中関係の悪化につながり、米国に有利だ。韓国については、米国が「今回は、お前は文句を言うな」と押さえつける。台湾も同じ。
 ② 長期的海洋汚染の被害コストよりも、短中期的利益の方がはるかに大きい。バイデンはいくら何でもあと最長6年でトップの座から消えるわけだから、そのあとのことはどうだっていい。

 最後にIAEAという特権階層の利害関係(某識者コメントを引用)――。

 IAEAが正義の集団であるかの誤解を国民に植え付けているが、彼らの望みと使命は地球上のあらゆる空き地に原発を建てることだ。原子力規制委員会も同様だ。彼らの収入・利益はどこからくるか、それを見れば一目瞭然。

<次回>

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