責任は残っても、悔いは残らない

 銀座の街頭を歩いていると、中国人観光客がめっきり減ったことに気づく。銀座はより自然体に近い状態の銀座に戻った。

94090_2銀座の夜風が冷たい。

 銀座だけではない。中国人観光客の激減で悲鳴を上げていた業者たちは、いよいよ気を取り戻し、台湾人客や韓国人客、あるいは東南アジア人客の集客に力を入れ始めたようだ。これは日本国内で起きるもうひとつの「チャイナ・プラス・ワン」。いや、私が一貫して主張しているように、「チャイナ・プラス・ワン」という中国中心の捉えかたは根本的に正しいとはいえない。「プラス・ワン」ではなく、「アジア・マルチ」なのである。

 今日、東京にある某顧客企業の本社を訪ねた。ミャンマー事業に乗り出し、上海から帰任した幹部が早速ヤンゴンに派遣されたが、たまたま日本帰国中なので、東京本社で会って意見交換することになった。

 「・・・とはいっても、中国にはまだ大きな市場がある。立花さんはその一部を切り捨てるとはいえ、大きな利益を放棄するようなもので、その代りにまだ大きな利益にならないミャンマーに進出するとは、思い切った決断ですね」

 褒められているよりも、心配されているだろう。このようなコメントを頂いたのははじめてではない。事実、現状はまさにおっしゃる通りだ。私はビジネススクール時代の某教授の言葉を思い出す。

 「戦略とは、やることとやらないことを決めることだ。やることを決めるのも大きな勇気が要るが、やらないことを決めるのはもっともっと大きな勇気が要る。往々にして、やらないことを決めることが、やることを決めることよりはるかに重要だ」

 私の決断は正しいのか、間違っているのか。2~3年後に歴史が重い結論付けをしてくれるだろう。ただ一つだけ結論が出ている――。悔いは絶対に残ることはない。やらないこと、やること、すべて自分の意思、自分の決断に従って、すぐに行動を起こした。その代り、すべての結果に対し全責任を負わなければならない。責任は残っても、悔いは残らない。