ジョホールバルの名店「吉祥」、趣味・実技・信念の三位一体

 マレーシアで日本料理といえば、この店の右に出るものはない――ジョホールバルの名店「吉祥」。経営するのは浅海さん。先日の出張で久しぶりに会食の場として利用した。

 その日は偶然にも料理人が全員休みで、なんと浅海さん自ら包丁を握ることになった。普段から割烹着姿を見ることはあったが、それが単なる趣味ではなく、実際に自分で調理するとは驚きである。やはり、趣味と実技が一体化している者は強い。私自身、かつて上海で趣味の延長としてレストラン経営に挑戦したが、調理の実技も現場経験もないまま、失敗に終わった。

 経営者であれ、現場を知り、実際に手を動かせるかどうかは、大きな違いを生む。

 「吉祥」の料理は、ほぼすべての食材を日本から直輸入しているため、価格は決して安くはない。それならば、シンガポールで展開すれば大成功するのではないかと浅海さんに聞いてみた。すると、「引き合いはたくさんあったが、すべて断った」とのこと。趣味実技に加え、金儲けを目的としない信念がある。これこそが、最強の三位一体ではないか。

 会食も後半に入り、浅海さんも席に加わった。午後6時前に入店し、店を出たのはすでに11時を回っていた。時間を忘れるほどの美食と語らいに感謝するばかりである。ご馳走様でした。

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