階級社会の真実(3)~下層を搾取する、強制労働の変貌ぶり

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 今の世の中は、1%の人が99%の人(の労働)を搾取している。と言っても過言ではない。奴隷社会やマルクスの時代よりも、むしろ、民主主義国家を含めて現代社会の搾取の度合いが格段に向上し、手段も洗練されたものに進化した。そのメカニズムを解明するには、まず歴史的に3段階を分けてみよう。

 第1段階、「法」による搾取の時代。奴隷制度がそれにあたる。法に則って、強制労働は合法的かつ正当に行われていた。ただ法により搾取されるのは、奴隷またはその他特定の身分・階級に属する者にとどまり、被搾取層はそのウェイトが限定的で、かつ可視化されているので把握は容易だった。

 強制労働は、労働者に労働するかしないかを選択する自由がない。それどころか、身体の自由さえないものだった。その搾取は、今時の表現にすれば、明らかな人権侵害であり、顕在化・可視化された搾取だった。

 第2段階、「理」による搾取の時代。産業革命当時、貧富の差が大きく、大勢の貧しい人たちは、空腹と戦い、辛うじて食いつなげるだけの低賃金でも、働かざるを得ない。労働条件がいくら劣悪であっても、搾取されることが分かっていても、働くしかない。そうした意味で非常に「合理性」を有した準強制労働だった。

 準強制労働は、表向きには、労働するかしないかを選択する自由があったように見えても、労働者は自分や家族が生き延びるために、不本意ながらも搾取を受け入れざるを得ない、そうした受動性を看過できない。現代においても、準強制労働が行われている。たとえば貧しい途上国の労働者が先進国へ行って出稼ぎするのもその一種と言える。

 第3段階、「情」による搾取の時代である。とりわけ先進国や一部の新興国において、大多数(ほとんど)の人は餓死や凍死するリスクが消え、小康状態の生活を送っているため、労働するかしないかは完全な自由意思に委ねられている。すると、上層階級が彼らを労働させ、彼らから搾取するために、情緒的・自発的な本人の意思を引き出さなければならない。つまり、自発的強制労働である。

 自発的強制労働は、人間の感情、欲望、欲求をいかに搔き立てるか、その成否にかかっている。分かりやすく言えば、人は情緒的に次から次へと物欲しさから商品・サービスを買い、どんどんお金を使っていくと、お金が足りたくなり、なかに借金までして消費する人もいる。このような状態になれば、いつまでも、働かざるを得ない。自発的に搾取を受け入れるだけに、それが潜在化・非可視化された搾取と言える。

 次節でそのメカニズムを解明していこう。

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