荷造り・・・

 5月に入った。マレーシア移住までは、いよいよ5か月を切った。

 上海出発は、9月26日の大安吉日に決め、引っ越しや業務スケジュールもこれに合わせて設定している。昨年2月にマレーシア移住を決定してわずか1年2か月という異例の短期間。長い期間をかけて延々と情報収集するよりも現地に入って住んでみるのが一番だと思っている。

 もちろん、経営者という立場で、自分のワークスタイルやライフスタイルを自由に決められるという特権があっての話だ。

 1999年秋、香港駐在中の私には、東京帰任の辞令が来た。いくら日本に帰りたくなくても、もはやその自由はなかった。毎日のように酒を飲んでいたが、何も変わらなかった。香港に残ってそのまま脱サラしようとも考えたが、その勇気がなかった。

 東京に戻って、運が悪く嫌な上司と先輩の下で働くことになり、我慢した末とうとう酔った勢いで「会社を辞めてやる」と言い出した。大志を抱き、緻密に計画した起業でも何でもない。辞表を出した後、生計を如何に立てるか、恐怖に怯える日々が続き、いまでも鮮明に覚えている。

 13年経った。自分は成功したと思う。何よりも、自由を手に入れた。もちろん、その分、保障が消え、すべての意思決定は自己責任で行う。それでも、悔いはまったくない。お客様、従業員、家族、そして周りのすべての人に感謝したい。もちろん、会社を辞めるきっかけとなった上司と先輩に、何よりも深く感謝したい。

 そんな気持ちで荷造りに取り掛かりたいと思う。