日系企業の例外、ERIS式インターン制度の思想と実践

 いよいよ、8月1日から、当社マレーシア法人ではインターン受け入れを開始する。

 第一陣は一人だけで、マレーシア工科大学(UTM)の学生会長を務める超優秀なスター学生である。通常であれば、大手日系や外資系の名門企業でのインターンを希望するのが自然である。そうした企業でのインターン経験は、卒業後の就職活動において履歴書上のブランド価値となり得る。しかし、彼が当社のような零細企業を選んだ背景には、「経済的待遇」よりも、「どんな大企業でも学べないことが、ここにはある」という確信があったのだろう。

 マレーシアにおいて、学生インターンの受け入れは広まりつつあるものの、その実態は理想とは程遠い。特に日系企業においては、「インターンは無給で当たり前」「実務は任せず、単調な雑務のみを与える」といった固定観念が根強く、学生にとって成長機会となるような環境は極めて限られている。

 このような背景の中で、当社が設計・運用しているインターン制度は、マレーシアにおいても、日系企業の中でも、きわめて例外的な存在である。

 (1) 本制度では、学生に対して月額RM900の基本手当を先払いで支給するだけでなく、インターン期間を通じた実績評価に基づき、最大RM1,600の成果報酬インセンティブを支給する。さらに、通勤手当もつけ、宿泊施設も無償提供するという手厚い体制が整っている。

 (2) 勤務時間についても、フレックスタイム制を採用しており、業務状況に応じて柔軟なスケジュール調整が可能である。たとえば、午後からの出勤に加え、夜間の顧客会食に同行することもあれば、学生側の私用や学業の都合による調整も、事前相談の上で柔軟に対応している。

 (3) さらに、海外出張へ同行もさせる。日本または中国への短期出張が想定されており、実地学習(on-site learning)としての位置づけである。指導のもとで、議事録やレポートを通じてビジネスの現場を体験し、単なる知識では得られない洞察を育む機会となる。

 (4) EPFやSOCSOの強制加入義務がない教育目的のインターンであることを前提に、大学との正式な受け入れ契約書、NDA(機密保持契約)、活動記録の整備まで徹底しており、法的・実務的な備えも万全である。

 この制度設計は、「新人は何もできないから育てない」という従来型の日本的マネジメントに対する、明確なアンチテーゼである。ERISは、教育こそが最大のブランディングであり、人材育成こそが企業の存続戦略であるという信念のもとに、大学・学生・企業の三者が利益を共有できる仕組み=トライアングル型の人材開発モデルを現実に構築している。

 かといっても、当社はインターンに対して自社就職を強要(拘束)するようなことは一切しない。むしろ、人材一人ひとりが最も幸せになれるキャリアを歩むことを最優先に考えている。特に当社が人事制度改革を支援し、改革に成功した顧客企業に対して、将来有望な若手人材をどんどん送り込んでいきたいと考えている。それこそが、制度改革を本当の意味で社会に還元する道であり、教育と経営が一体化するERISのビジョンそのものである。

 このようなインターン制度は、単なる採用前体験にとどまらず、「初任給を1〜2割高く設定できる即戦力人材」を育成するインフラとして機能しつつある。マレーシアの若手人材は十分な能力を持っており、そのポテンシャルを引き出す環境さえ整えば、既存の人材マーケットを凌駕する価値創出が可能である。

 他社が「インターンはコスト」とみなす中で、ERISは「インターンは未来への投資」であると考える。この発想の違いが、やがて企業競争力の差として現れることは疑いようがない。

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