打楽器雑想

 土曜の夜、クアラルンプールのツインタワーにあるMPO(マレーシア交響楽団)本拠地のペトロナス大ホールでバレエ「カルメン」を鑑賞。

0000場内撮影禁止のため、写真を公式ウェブサイトから拝借した

 後半のオケ編成が面白い。管楽器がほとんど撤去され、打楽器の大編成になった。通常相対的に出番の少ない打楽器が主役になることで、面白くてボックス席からたびたび乗り出して、真下の演奏席を覗きこんだ。

 オーケストラは基本的に、管楽器、弦楽器と打楽器で編成を組む。しかし、「管弦楽団」という名があって、打楽器が名称からはじかれるのはやはり出番が少なかったからであろうか。

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 といっても打楽器はおそらく人類史のなかもっとも古い楽器になるのではないか。もっとも手軽に始められる音楽といえば打楽器。金属や木片といった素材があればある程度の音楽が出来てしまうのだ。何よりもそのリズム感、ときには原始的な鼓動で胸が高鳴り徐々に佳境に入れば、高揚感に陶酔するのも心地よいものだ。

 打楽器のことで音楽辞典を調べると、「打つ、擦る(こする)、弾く、振るなどの演奏方法で音を出す楽器の総称」となっているが、では、弦を弓でこするバイオリンやチェロも打楽器の部類に入ってしまうのではないか。さらに、ギターや三味線、琴も打楽器になるのか。おそらく現在俗に言っている打楽器は、「打つ」という奏法を意識しての名称ではないかと思った。

 冒頭で述べたとおり、西洋系のクラシック音楽では打楽器がそれほど重要視されておらず、あくまでも副次的、付随的な存在であったように思えたのである。しかし、アジアやアフリカでは、たとえばバリ島で聞いたガムラン音楽なども好例だが、むしろ打楽器中心になっている。

 そういう意味で、西洋系クラシック音楽のなか、打楽器主役あるいはアンサンブルの曲目が一際目立つようになり、私が大好きなラヴェルの「ボレロ」は、出だしのパーカッション(打楽器)が躍動感に溢れて、そのあとに溶け込んでくる木管(フルート)と織り成すハーモニーは絶妙だった。

 昨夜の「カルメン」も、打楽器が素晴らしい演出を見せてくれた。

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