土曜日、ベトナム出張を終え、ハノイからクアラルンプールへ移動。ハノイ・ノイバイ空港のチェックインでパスポートと取得したばかりのベトナム・レジデンスカード(居住証)を提示すると、係員が怪訝な顔をして確認してくる。「あの~、すみませんが、居住地はどちらですか」
私のパスポートには、中国の居留許可やマレーシアの居住ビザが張られているからだ。さぞかし珍しいだろう。「そうですね。あちこち行ったり来たりしていますので、マルチホームです」と、私が仕方なく答える。「なるほど、マルチホームですね。それは素晴らしい」、係員が納得したようだ。
マレーシア、ベトナム、中国、日本。――いま、私は4か国の居住権をもっている。誤解のないように、「居住権コレクター」たるマニアックな変人では決してない。あくまでも仕事や居住の都合で取っただけである。
「狡兎三窟」という熟語がある。兎は外敵や災害から身を守るために三つの隠れ穴を逃げ道として常に確保しているという意味から、人が身の安全のためにたくさんの避難場所やさまざまな策を用意することが喩えられている。英語では、「Don’t put eggs in one basket」という諺がある。「卵を全部一つのかごに入れるな」、これも同じ趣旨で複数の逃げ道を作れというリスク管理の教えである。
ついに、「狡兎三窟」ならぬ「狡兎四窟」まで作ってしまった私は、リスク管理の通常レベルを超えているのだろうか。昨今の世界はかなり複雑化していることから、プラスアルファがあってもいいのではないかと、自分はそう思った。
そういう意味で、私は一種の「有職・住所不定者」である。





