静寂な変化に将来見えるか、日の出の温度差と時間差原理

 静寂な成功。

 ――米経済誌「フォーブス」は2月号で、ベトナム経済の30年回顧記事を掲載し、「静寂な成功を収めた」と評する。

 30年前の世界最貧国の一つであったベトナムは、今日の中所得国に躍進した。1986年にキックオフされたドイモイ(刷新)政策は、ベトナム経済のテイクオフをもたらした。都市建設の発展は、「戦争と寒村」というベトナムのイメージを一掃し、近代化に向けての躍進は驚異的なものであった。

150813-1735-HCMC_01ホーチミンにて

 私がベトナム出張するたびに、90年代初頭の中国で覚えた躍動感を感じ、期待と興奮を覚える。中国のような派手さはない。気が付けば、えっ、ベトナムってこうなったんだという感触を裏付けるものは、まさに「サイレント・サクセス」、静寂な成功である。

 静寂な成功は、なかなか気付かれない。20代や30代の日本人若者と話をしていると、中国中国とやっとここ数年、中国に目覚めた。正直、もう遅い。90年代の中国もまさに「静寂期」だった。目立たない。その当時を思い出すと、香港ブームがあって、中国本土には日本人の若者たちがあまり目を向けようとしなかった。

 日の出から、昇る太陽の熱を体感できるまでだいぶ時間差がある。冷たい黎明の夜空に微かに現れる一筋の光に、昇り切る太陽の暖かさを感じられる人はそう多くない。太陽は静寂なうちに昇るものだ。逆になるが、日没もまた然り。

 兆候と実感の間に時間差が存在する。その時間差は何を意味するか。各人にそれぞれ答えがあっていいと思う。