パースの夏(6)~世界一幸せな動物に会いにロットネスト島へ

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 2月1日(水)、前日ある事情によって行けなかったロットネスト島に出かける。そのある事情とは、また機会があれば後日番外編として公開しよう。

 朝8時30分、ツアーバスがパース市内のバラック・ストリート・ジェティー(埠頭)に到着すると、本日の日本人ガイドK子さんがすでに案内板をもって待機していた。

出港した船から眺めるパースの美しいスカイライン

 一通りの挨拶が終わるとすぐに乗船。8時45分頃、船が出港。パース中心部を離れた船はスワン川を下っていく。しばらくすると川北岸に豪邸群が現れる。特筆すべきは、時価56億円の某鉱山オーナーの大豪邸。中に映画館やボーリング場も付設されているという贅沢ぶりである。K子さんによると、この豪邸の毎月の電気代だけでも50~60万円ほどかかっているという。

ロットネスト島のベイスン・ビーチ (The Basin)

 鉱山のオーナーというのは、来る日も来る日も、地下から掘り起こしたものを売るだけで大金が黙って流れ込む、いわゆる不労所得を得る大資産家である。「額に汗してお金を稼ぐ」を美徳とする日本人の平均的な価値観に照らして、この種の資産家はどう評価されるのだろうか。

ロットネスト島のワジュマップ灯台 (Wadjemup Lighthouse)

 こういうことを考えるのが不幸になる元。いわゆる社会の不公平から妬みを生み出すことは、ルサンチマンである。ルサンチマンからは絶対に幸せが生まれない。私は「世界一幸せな動物」クオッカに会いにロットネスト島にいくのだから、ルサンチマンをやっている場合じゃない。

ロットネスト島

 11時、船がロットネスト島の桟橋に接岸。さあ、上陸だ。

ロットネスト島上陸

 ロットネスト島の名前の由来をK子さんが説明してくれた。当初、オランダ人の探検家がこの島に上陸すると、そこに住む大量の小動物クオッカ(Quokka)を巨大ネズミだと思い、「ロットネスト(ネズミの巣)」と名付けた。英語ではネズミはラットだが、オランダ語ではロットなのでロットネストと発音されている。

クオッカ

 クオッカは、なぜ世界一幸せな動物と呼ばれているかというと、2つの理由がある。まず、口角がきゅっと上がっている様子がまるで笑っているような顔に見えること(特に顔の下方から見た場合)。次に、天敵がいないこと。

クオッカはロットネスト島のシンボル

 食物連鎖という強弱上下関係を示す生態系ピラミッドの上方に位置するほんの一部だけが勝ち組であるのに対して、大半は被食(食べられる)の負組に属している。しかし、なぜか、クオッカを食べようとする猛獣類が存在せず、クオッカは悠々自適に生き延びられたのである。生物学的な理由は、私には分からない。

 そして、ほとんどのクオッカはとても人懐っこく、人間にも警戒心なく近づいてくる。

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