死ぬまで働く、40歳定年から生まれる逆説的生涯現役

 生涯現役というが、日本の老人で体力・健康面の問題がなくても、実際に熾烈な市場競争のなかで働け、勝ち抜ける人、どのくらいいるのだろうか?

 生涯40年も日本型組織の中にいれば、批判的・クリエイティブな思考力も、サバイバルに耐えうる生命力もほぼすべて去勢されている。企業から放り出された時点で、ほとんどの人はもう終わっている。

 60代も70代もバリバリ働ける人は、定年して企業組織から生まれにくい(ごくごく少数の例外だけ)。だから、早い段階、企業から離れなければならない。

 私自身の体験からいうと、35歳に脱サラ。企業を離れてみると、自分は自力で糧を得られないただのサラリーマンだったことが分かった。そこで5年間、寝る時間もなく本当に過酷な状態で働き続け、やっと辛うじて食いつなぐところまでたどり着いた。

 40歳、そのまま体力を消耗していくと体がもたない。すこし頭の中身を充実させてもっと効率よく働かなきゃダメだと悟った。商売のチャンスを半分捨てて、大学院の門を叩いた。

 そこから9年、やったこともない法学と経営学を学んだ。自分で学費を払って勉強するオヤジ学生は、なんと最終的に留学先の上海で、政府奨学金までいただいた。

 学位論文答弁では、教授と激論になったにもかかわらず、最終的に2つの修士号と1つの博士号を手に入れた。

 「立花さん、そんな学位を取って、マッキンゼーでも作る気か」。ある顧客に皮肉された。「いいえ、マッキンゼーは100の仕事ができて、私はマッキンゼーのできない101番の仕事を作るだけ」と答える。

 それは、マッキンゼーには、立花聡というコンサルタントがいないからだ。Only Oneの世界が一番強い。

 まあ、多分、このまま行けば、アルツハイマーさえかからなければ、死ぬまで現役で働けるだろう(加齢とともに仕事の量はもちろん減らしていくが)。要するに基本的に年金に頼らず、自力で死ぬまで自分と家族を養うことだ。

 35歳の脱サラ、その中身は会社と戦い、ほとんど解雇されたようなものだった。でも考えてみると、もしそれがなかったら、おそらく今の私もいないだろう。

 最近、少しずつ議論されるようになった「40歳定年制」。劇薬でありながら、多くのサラリーマンには未来を切り開くチャンスでもある。組織の中で組織のことを一通り勉強させてもらい、学び逃げ、もらい逃げする。これほど都合のいいことはない。

 70代、あるいは80代まで現役。それは定年延長で実現するのでなく、定年繰上げ、大幅繰上げによって実現するのだと、私はそう思う。

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