バレンタイン商法と人間心理

● バレンタインデーの5つの立場

 バレンタイン贈答は、大衆を対象とした商法である。人々の立場を分類すると、次の5つに分けられる。

 1. それを知らずにやっている人。
 2. それを知っていてやっている人。
 3. それを知っていてやらない人。
 4. それを知らずにやらない人。
 5. やりたくても相手がいない人。

 お菓子業者は、4の層に対して「消費者啓蒙教育」を行い、5の層に向けて「一人チョコ」を開発する。商機とは、こうした分類の中に潜んでいるのである。

● 哲学と恋愛の相性

 「立花さんは哲学ばかりやっていると、女性に嫌われませんか?」——某友人にそう聞かれた。確かに言われてみれば、そういう気配はなくもない。私は決して女性にもてるタイプではない。

 ずいぶん昔の話。バレンタインデーにある女性からチョコをもらったとき、私は考え込んでしまった。「気分でも悪いの?何を考えているんですか?」と彼女が聞く。私は答えた。「義理チョコの仕組みについて」。「えっ、そんなの考えないでしょ、普通は」。呆れ顔の彼女を見た瞬間、「嫌われた」と実感した。

 そのとき私が考えていたのは、業者がいかに「義理チョコ」という仕組みを拡販戦略に利用しているかということだった。

● 「ヒト」と「コト」の関心の違い

 倫理学者や心理学者の一般論によれば、女性は「他人(ヒト)に対して関心を抱きやすい」が、「分析やシステムの構築(コト)に対して関心を抱きづらい」とされる。もちろん、これはあくまで一般論に過ぎないが、しばしばその通りの場面に出くわすことがある。

 だが、例外も存在する。

 ある女性が恋人と別れたとき、私はなぜ失恋したのかを分析してみせた。すると、彼女は突然手を叩いて驚いた。「全部その通りだわ。元彼と会ったこともないのに、立花さんの推論、全部当たってる。だから彼と別れるのが正解でした。それでよく分かった。すっきりしたわ…」

 なぜ、彼女は私の分析に興味を持ったのか。考えてみると、それも結局「ヒト(元彼)に絡んだコト(分析)」だったからではないか。人の関心のあり方には、法則がある。そして、その法則が崩れるときこそ、新たな理解が生まれるのかもしれない。

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