南部アフリカ紀行(22)~チョベ、ジンバブエとボツワナの相乗りと駆け引き

<前回>

 5月13日(日)、ジンバブエから国境を越えて、隣国のボツワナへ入る。ボツワナのチョベ国立公園でサファリ観光して、日帰りでビクトリアフォールズへ帰ってくる予定だ。

 ビクトリアフォールズからボツワナ国境までは車で45分ほど。これでチョベはビクトリアフォールズの日帰り観光圏に入る。これが見事な計算だ。世界的に有名な観光地であるビクトリアフォールズを訪れる観光客のほとんどが、このチョベ日帰りツアーに参加しているのではないだろうか。

 ボツワナは地理的好条件で隣国ジンバブエ訪問の観光客をうまく惹きつけ、自国に金を落とさせる。その一方では、チョベというオプショナルツアーも同時にビクトリアフォールズの訪問客にとっての付加価値になる。滝の観光だけでは物足りないので、どうだ、サファリもできると。さまに、WinWinのビジネスモデルだ。

 とはいえ、微妙な駆け引きもないわけではない。ジンバブエは、ザンビアとの自由往復ビザ「KAZA UniVisa」にボツワナのチョベをも加えている。ただし条件付きで、チョベへの日帰りに限定してジンバブエへの再入国を許可するものである。ボツワナ側に泊まらせないわけだ。実際にチョベに行ってみると、確かに宿泊施設が少ない。

 さらに国境における出入国の手続きも両国それぞれ行う必要があるし、ボーダーポストもかなり離れている。実際に旅行客が陸路で荷物を引きずって出入国や通関することは大変厳しい。ザンビアもボツワナも国境隣接に一定規模の街がないだけに、ジンバブエのビクトリアフォールズが実質的なハブ役を引き受けている。商売上手だ。

 ビクトリアフォールズという街はとにかく、商売気が濃厚だ。

 街を歩いていると、物売りがしつこくつきまとう。追い払っても追い払っても付いてくる。ゆっくり散策できない。売り物は民芸品の木彫りから観光ツアーまで、一番たくさん売っているのはすでに廃止されたビリオン単位のジンバブエドル札だった。ジンバブエでは2008年に5000億%のインフレになり、ゼロを数えるだけで頭が大混乱するような超高額の紙幣が次々に刷られ、最終的には100兆ドルまで登場する始末。

 それだけならまだしも、ビクトリアフォールズという街の物価が高い。商品やサービスの品質に釣り合わないほど高い。特にナミビアからやってきた私にとって、ナミビアの物価の安さ、品質とコストパフォーマンスの良さとの対比で、ジンバブエ、とりわけビクトリアフォールズの印象が極めて悪い。

 さて、ボツワナに話を戻そう。終日のチョベ国立公園サファリ観光は、午前の部と午後の部に分け、午前はチョベ川でのボートサファリだ。船に乗ってチョベ川のクルーズを楽しみながらのサファリは、従来の陸上サファリよりものんびりしていてなかなか悪くない。

 ※本文の写真はすべて、チョベ国立公園のチョベ川ボートサファリ中に撮影したものである。

<次回>