イポー食い倒れ日記(8)~イポー鶏フライドチキンの別世界

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 第5ラウンド、イポー2日目の夕食は少々趣向を変え、B+級のレストラン「ユムユム」(Yum Yum Restaurant)に出かける。

 完全な中華料理よりも、ニョニャ風のメニューも入っているところが面白い。現地では少々高級の部類に入るレストランなので、念のため事前に酒の持ち込みを電話で打診したところ、快諾。

 イポーのほとんどのレストランでは、アルコール持ち込み可となっている。しかも、持込料無料、あるいはわずか数リンギット。店によっては、ビールすら置いていないところもあるから、酒飲みには「どうぞご自由に」という姿勢は素晴らしい。

 冒頭は薦められた「揚げ魚のレモンソース仕立て」。私は酸味の強いマリネ系の料理が苦手だが、このレモンソース仕立ては、まったく酸味らしい酸味を感じさせない。それよりもハーブの香りがアクセントに付けられていて、大変食欲をそそる一品である。

 続いては、「フライドチキン」を注文。「あんた、ジャンクを食べないじゃないの」と妻からグサッと刺さる一言。フライドチキン即ちジャンクフードという考えそれ自体が非論理的だ。反論する気持ちをぐっと抑えて料理を待つ。

 運ばされたフライドチキンを一口食べた妻は「これ、フライドチキンと思えない。本当に美味しいわ」。もうこれ以上の議論も不要。イポー鶏の特製フライドキチン、これをケンタッキーと一緒にされたら鶏も成仏できない。まったくの別物、まったくの別世界だ。

 肉のあとは野菜。野菜といえば、イポーのモヤシが登場。これはモヤシ鶏と異なる炒め方で仕上げられているが、シャキシャキ感はなんら変わらない。

 続いては、「車えびのハーブソース仕立て」。中華よりもニョニャ風というか、完璧な南国仕立てだ。マレーシアの美食は何と言っても、食文化の混合とトロピカルなフレーバー。北東アジアでは味わえないエッセンスである。

 さらに、肉料理に戻る。「ダチョウのオイスターオイル炒め」。広東料理では通常、牛肉だが、なんとここは、ダチョウ肉である。まったく癖がなく、柔らかい。ダチョウ肉は他の食肉と比べても低脂肪、低カロリー、高たんぱく、高鉄分でヘルシーな食肉だ。ここまで言ったら、単なる大食いの自己弁護にしか聞こえないが、まあ、言うだけ言っておこう。

 最後は「マナガツオのカレー」とご飯で締めくくる。マナガツオの銀色がカレーの鮮やかな赤色によって引き立てられ、何と美しいことか。立ち上るトロピカルな香りと一体化し、まさに視覚と嗅覚のハーモニーを織り成す。

 本当に、ご馳走様でした。

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