サパの旅(10)~南へ向かう道のり、そして長い1日

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 10月15日(月)朝。解熱剤が効いた。体が少し軽快になり、長く続いた準絶食状態から来た空腹感に襲われ、病体を引きずってゆっくりとホテルの食堂へと向かう。

 少量ながら、しっかりした朝食を取って長い移動に備えて元気をつけておきたい。野菜、たまご、肉、お粥とこれだけ食べておけば、24時間はもつだろう。

 朝食後は、解熱剤の服用時間。さて、飲むか飲まないか――。

 私は薬大嫌い人間だ。病気はよほどの重症にならない限り、苦しくてもある程度我慢して自力で治すようにしているほうだ。発熱は体に侵入した細菌やウイルスから体を守るための、免疫機能を高める働きの1つだ。発熱とは、体がきちんと自己防衛している証拠なのだ。これを過剰に抑え込むことは決してよくないと自分はそう考えている。

サパの街

 解熱剤は通常0.5~1℃程度体温を下げると言われているが、逆算するとおそらく現状では38℃くらいの発熱があると考えられる。であれば、一度解熱剤を止めて、発熱状態に戻そうと考えた。細菌をしっかり殺しておきたい。

 月曜の夜、サパを出発することになっている。ホテルには、追加延長料金を払っての18時までのレイトチェックアウトを依頼すると、病人だから無料で出発時間の19時30分まで部屋を使っていいですよと。本当にありがたい。感謝感激。

 解熱剤を一時中止したところ、案の定正午あたりからまたじわじわと熱が上がった。ただ前日のような猛烈なものではなくなった。一時パソコンとにらめっこして溜めこんだ業務処理も当たれるほど改善した。とはいえ、これから24時間の移動を難なくこなせるかどうか。そこまでの自信はない。

 19時30分、解熱剤を服用したうえで、ホテルの車に乗り込む。サパから下山。
 20時30分、ラオカイ駅到着。
 21時40分、夜行寝台列車ビクトリア・エクスプレスが発車。横になって休養・就寝。
 
 10月16日(火)早朝5時30分、終着駅ハノイに到着。ロッテホテルで2時間ほど休憩後、ノイバイ国際空港へ移動。

 9時45分、出発ラウンジに入り、24時間ぶりの軽い食事。
 14時、搭乗便のマリンド・エアOD572便が1時間45分遅れてハノイを出発。
 18時、クアラルンプール国際空港到着。
 20時、自宅帰還。

 24時間の移動、長かった。そして辛い旅路だった。

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