時代の孤児、進化史から取り残された馬来中華料理の醍醐味

 マレーシアの中華料理で今時洒落た創作系のようなものが極めて少ない。どこに行っても時間が止まったような昔ながらの元祖中華料理に出会う。

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 さらに高級系も少なく、大体庶民派のB級グルメがほとんどだ。中華料理はもともと決して高級の部類とはいえない。いわゆる付加価値をつけるために、大概三つの手段が講じられる――。一つは高級食材。フカヒレやアワビ、稀少種類の海鮮、ここ数年に至ってはフォアグラといった西洋系食材も取り入れはじめ、どんどん単価が釣り上げられる。もう一つは調理法とアレンジメント、西洋風や和風にアレンジされたいわゆる創作系、それに高級食器に美しく盛り付けられサーブされるとついつい消費者の財布のひもが緩む。最後にレストラン自体の内装やサービスの高級化(ただ中国本土のサービスは全然高級化になっていないが)。

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 マレーシアの中華料理はどうやら、この進化史から取り残された時代の孤児のように、昔ながらの中華の味や形体を頑固に維持している。付加価値の上乗せが少ないだけに料金も割安のまま、貧富に関係なく誰もが手を出せる大衆食になっているのである。

 道端の半青空の食堂、屋台に固定の屋根がくっついている程度のもので、連日満員の大盛況。短パン、Tシャツにサンダル、風呂上がりのぼさぼさ頭でも平気、健康な胃袋を用意して頬張ればよし。

 味覚保守派の私にとってみればこれとない美食の殿堂であり、美食万歳の我が人生を謳歌し、至福の日々をエンジョイしているのである。

 馬来中華万歳!