労務派遣規制引き締めへ、新たな追加政策制定に着手

 中国全国総工会の張鳴起副主席は、「労務派遣を規範化するため、総工会と人力資源社会保障部は合同検討作業に着手した」と明らかにし、「最終的に追加政策を打ち出すことになるだろう」と説明した(2011年3月16日付「労働報」)。

 主にターゲットにされているのは、労務派遣の「臨時性、補助性、代替性」という「3条件」問題である。

(1) 「3条件」の経緯

 「労働契約法」第66条では、「労務派遣は、一般に、臨時的、補助的又は代替的な業務職位において実施する」と定められている。ここの「臨時的」「補助的」「代替的」というのは、俗称「3条件」。その趣旨は、労働契約の締結率(正規雇用)の向上を目指すうえで、3条件規制を利用して労務派遣業の成長を制約することにある。しかし、他方では「労働契約法」で労務派遣の領域に常時雇用制度を導入し、2年以上の契約締結義務を付与している。では、「2年」とは果たして「臨時的」といえるのだろうか。

(2) 「3条件」の解釈の拘束力

 「3条件」の解釈について、抽象的である。労働保障部労働賃金司(2007年12月当時)の邱小平司長の説明によると、以下の通りである。

 ① 「臨時的な業務職位」とは、派遣労働者の使用期間が明らかに6か月を超えない業務職位を指す(注:労務派遣における2年以上の契約締結義務との矛盾もしばしば問題視されている)。「3条件」の解釈について、抽象的である。労働保障部労働賃金司(2007年12月当時)の邱小平司長の説明によると、以下の通りである。

 ② 「補助的な業務職位」とは、その業務職位が職場における主要業務ではないことを指す。

 ③ 「代替的な業務職位」とは、すでに労働者がそこで勤務していたが、何らかの原因で当該労働者が当面の間、当該業務職位に勤務することができなくなったため、別の労働者が臨時的に勤務することで、本来の労働者に代替することを指す。

(3) 「一般的」と強行性の問題

 「労働契約法」第66条では、「労務派遣は、一般に、臨時的、補助的又は代替的な業務職位において実施する」と、「一般に」という表現が使われている。法律的には、「強行性」の色が薄いといえるが、後日、「一般に」という文言が、「・・・なければならない」に改められていた。内部法案化段階では、このように起案されていた。

 さらに、2008年4月に公開された「中華人民共和国労働契約法実施条例(草案)」の公開意見徴収版の第38条の規定は、「使用単位は一般に、非主要業務の業務職位、存続期間が6か月を超えない業務職位、又は本来その業務職位に従事していた労働者が学習、休暇などの理由で臨時的に勤務できないため、他者がそれに代わり勤務しなければならない業務職位において、派遣労働者を使用することができる」と、厳格な解釈を残しつつも、「・・・なければならない」はすでに「一般に」へ変更されていた。

 そして、2008年9月に公布された「労働契約法実施条例」は、これらの解釈をすべて削除した形で公布された。二転三転の変化にもかかわらず、上層部が労務派遣業の縮小ないし消滅を狙っている意図は変わっていないようだ。

 本文冒頭の中国全国総工会の張鳴起副主席の発言の続きを紹介する(一部抜粋)――。

 「現在の労務派遣は、濫用されている。多くの職位は、『補助的』職位ではなく、主要職位だ。労務派遣は脱線している。・・・『3条件』は具体化しなければならない。・・・同一職位でも、正規雇用との格差が大きい。基本給や福利の格差、そのうえ、『同一労働同一賃金』原則の回避で、一部の企業では、ある職位についてすべて労務派遣にして、格差抹消の小手先に精を出している。・・・民主と政治的権益にも問題が多い。一部の企業では、従業員代表大会にごく少数の労務派遣者代表しか入れない、などなど」

 このような状況を背景にし、追加政策をもって労務派遣を規範する意図が明確になっている。張副主席は、具体的な手法として、毎年労務派遣の正規雇用化についてしかるべき指標を企業に提示する可能性も示唆している。

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