中国でのエレベーター攻防戦、「臨界距離」と閉扉の数学対戦

 少し前の話。出張先の中国某地ではホテルに泊まる。ホテルに泊まるとエレベーターに乗る。エレベータに乗ると攻防戦に遭遇する。

 私がロビーからエレベーターに乗る。エレベーターまでの距離は、約8メートル。エレベーターに中国人の先客が乗っていて、出発を待つばかり。先客の目と私の目が合う。私が駆け足で小走り出す。0.5秒、1秒……。先客は、私を置き去りにしようという姿勢を明らかにし、「閉める」ボタンを押し続ける。0.5秒、1秒……、エレベーターの扉がゆっくりと閉まり始める。

 私がスピードを上げ、走り続ける。1.5秒、2秒……。先客の指が激しくピストン運動を始め、「閉める」ボタンを叩く。しかし、扉は一向閉まるスピードが上がらず、一定の速度で閉まっていく。1.5秒、2秒……。

 ……2.5秒、3秒。はい、到着。エレベーターの扉は、完全に閉まるまであと20センチ。私の足がスッと踏み入れると、扉がバタンッと障害物に反応して、今度、ゆっくり開き始める。先客は、気まずそうに、指を「閉める」ボタンからはずし、すっかり落胆した表情。私は、意地悪そうに笑顔で先客に会釈。今度、私が「閉める」ボタンを押す。

 100メートル競走の世界記録は、9秒台。私のようなデブの小走りなら、世界記録の3倍の時間で計算すると、1メートル当たりの所要時間は、約0.3秒。エレベーターは、「閉める」ボタンを押して、実際に閉まるまで約5~6秒。その間、どんなに「閉める」ボタンを叩いても、扉の閉まるスピードは上がらず、一定に保つようになっている。

 だから、8メートルの距離なら、私は3~4秒で飛込み搭乗が可能で、先客に勝算はない。15メートル以上だと、私が敗退する可能性が出てくるわけで、「臨界距離」は15メートルとして考えたい。

 目測距離で速算して、その結果がわかれば、先客は、むしろ「閉める」でなく、「開ける」ボタンを押したほうがよい。飛び込みで乗った私の嫌味っぽい目線でいじめられることもなければ、親切ぶりで私に感謝されるほどだ。あと、私の飛び込みによって、扉はバタンッと1回開き直してから再度閉まることになり、かえって時間の無駄になる。

 飛び込み乗車ならぬエレベーターの飛び込み乗機の攻防戦も、立派な経済学で解ける。臨界距離の目測計算できずに、「閉める」ボタンを押し続けるのは賢い行動ではない。

 日本の場合、エレベーターの先客は、通常親切に「開く」をやってくれます。駆け足で乗り込むと、「遅くてすみません」というが、中国の場合は、その逆パターンが多い。「閉める」を押し続ける先客には、「早くてすみません」と言わなければならない。

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