経営会議か労使交渉か、中堅幹部と従業員の馴れ合いが悪性和諧

 5月9日(月)、早朝から蘇州日帰り出張。蘇州Y社の人事制度構築が終盤に差し掛かって、評価制度の議論である。

 蘇州Y社では、これまで、人事コンサルティング専門会社C社の制度を使っていたが、不都合があって、今回全面的に当社設計の制度にシフトした。最後に残された評価制度を変えるかどうかで、現場の声をくみ上げての議論になった。

 いざ現場のフィードバックを見ると、制度改革に対する意見や希望よりも、ただ自己利益を主張するものが多かった。

 いったん設定した目標を、どんどん都合で変えてしまう。要は自分で達成できる目標しか立てたくないという根性だったり、うーんと言わせるようなものが目立った。

 中国の人事現場といえば、明けても暮れても、従業員の自己主張だ。私は、自己主張が大いに結構だといつも言っている。ただ、一方的な自己主張ではなく、問題意識をもって会社と従業員の利益が最大化できる提案をも盛り込んだ、全般的に建設的な意見を評価したい、と言っているのだ。

 が、このような労使共栄の提案をしてくれたのが、いままで数百社の経験から、わずか3、4人だけだった。大変残念だ。

 中間管理職まで、労働組合幹部のような発言を連発し、一方的な利益主張をする。これほど見苦しいものはない。経営者の貫禄どころか、基本的な姿勢のかけらもない。とても、悲しい。

 中堅幹部と部下の馴れ合いないし癒着が目立ち、私は、この現状を、中国企業内の「悪性和諧」と呼ぶ。

 経営会議でも、幹部中心の参加者でさえ議論の基盤を共有しておらず、一方的な利益主張の言論が飛び交っていれば、一瞬、労使交渉のテーブルと間違えていたりする。

 まあ、異なる側面からいえば、これが中国人事現場ならではの「醍醐味」であって、コンサルタントの腕の見せ所でもある。

 夕方、7時間余りの議論がやっと終了。

 19時過ぎ、上海に戻り、スタッフ4人で打ち合わせを兼ねて、A居酒屋で夕食。疲れた……。今日も日本酒がおいしい。

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