上野千鶴子氏『平等に貧しくなろう』に3つの疑問

 社会学者・東京大名誉教授上野千鶴子氏の記事『平等に貧しくなろう』について、3つの疑問を提示しよう。

 1つ目の疑問は、主語(主体)「誰」が平等に貧しくなるのか。文中に「みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい」との記述があるが、その「みんな」とは誰を指しているのか。もし、中産階級の消滅を前提に、一部のエスタブリッシュメント(上層)と一般庶民(下層)が分化し、下層の「みんな」が平等に貧しくなるのであれば、上層と下層の間に流動性(上層から下層への転落もあれば、下層から上層へ這い上がることもある)があるのか、それはどのようなメカニズムに基づくかを知りたい。「みんな」が貧しくなり、それで安心し、流動性の遮断を看過する。そうした結果を狙った意図のないことを証明してもらう必要がある。

 2つ目の疑問は、前提。この記事は、日本の人口減少移民拒否を前提にし、そこから衰退するという結果を導き出している。移民拒否について、上野氏が述べたとおり、日本は移民に適していない。それは同意する。ただ、「人口減少→衰退」というのは必然的な関係にあるのだろうか。高齢者の現役活用、全社会の生産性向上、ひいては定年の撤廃など多方面の検証と模索について、なんら言及もなされていない。単一民族の高齢化社会だから、必ず衰退と貧困を迎え入れなければならないという排他的な推論は到底いただけない。

 3つ目の疑問は、結論。上記2つの疑問から生まれるのは、「社会民主主義的な方向」という結論誘導にほかならない。おそらく反論としては、北欧あたりの事例が引っ張り出されるかもしれないが、日本には北欧同様のモデルが適用できるのかという新たな議論が生まれる。

 議論は大変よいことだ。ただ、「社会民主主義的な方向」という結果を前提にした議論は、乱暴すぎる。論理の飛躍でもある。大変優秀な学者である上野氏は、議論の方法を熟知しているはずだ。再論の検討をお願いしたい。最後に、整理すると、上野氏が提唱しているのは、再分配、つまり「金の分け方」。私が言いたいのは、その前にまず「金の作り方」を検討すべきではないかということだ。

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