害をもって利をなす、コロナ禍の発想転換

 紀元前2世紀、小アジアのポントス王国の国王、ミトリダテス6世は、毒殺から身を守るために、致死量に満たない毒を自ら飲み、しかもその量を少しずつ増やしていき、毒の免疫力を得た。これを証明したのは、彼の死だった。ミトリダテス6世は最終的に服毒自殺を図ったが、体内に強い耐毒性がつき、服毒自殺が失敗した。そのため、彼は自軍の将校に首を刎ねてほしいと頼まなければならなかった。

 ワクチンも毒だが、耐毒性という意味でこれに似た効用といえる。しかし、当時のミトリダテス6世は植物から抽出した毒を取っていたのに対して、今日のワクチンはそれほどシンプルなものではない。さらにいうと、食品添加物も少量ずつ増やしていけば、添加物に対する耐性ができるかというと、それもやめた方がいいだろう。特に多様な化学物質が相互作用を引き起こした場合、厄介である。

 この話を引っ張り出した本来の意図は、「害をもって利をなす」という原理を説明するためだ。世の中は害を受けたくない人がほとんどである。しかし、場合によっては害が利に転化することもある。戦略的に自ら害を受け入れてそこから利を引き出す人は、稀有な戦略家でなかなか真似できない。しかし、一般人の場合、やむを得ず受けた害に対する見方や捉え方を変えることによって、害を利に転化させることは決して不可能ではない。

 コロナ禍という害も然り。そこから利を引き出せるのか?

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