昨日夕方から降り出した雨が止まず、珍しく一昼夜降り続けている。クアラルンプールの雨は通常、スコールで数十分か長くても数時間集中的に降ってすぐに止む。今回は長い。
いかにも北東アジアっぽいどんよりした空が赤道直下の街には似合わない。ジメジメした空気に引きずられ、気分が沈んでしまいがち。そういうときにショパンの「雨だれ」を聴き、 思いを馳せるがいい。
ショパンは持病の肺結核の療養も兼ねて恋人のジョルジュ・サンドと地中海にあるマヨルカ島に長旅に出かける。陽光が溢れる温暖なはずの島はなんと滞在中は悪天候が続き、ショパンの病気も相まって悪化。そんなある日、食料を調達しようとサンドは出かけたものの、豪雨と強風に遭遇し足止めを食らう。その間にショパンが熱で震えながらも書き上げたのは「雨だれ」だった。
偉大なアーティストはやはり違う。受難しつつも凡人で想像すらできない偉業を成し遂げる。裏返せば、神様が偉大なアーティストには病や災いを意図的に与えていたのかもしれない。凡庸な現代人のわれわれは「安全」や「安心」「安定」を求め、試練の機会から逃げ回っている。われわれの心がどれだけどんよりしているのだろうか。
雨は夕方になっても止まない。